Linspireに下されたリストラ宣言:Trend Insight
時代の流れが1つのディストリビューションの終わりを告げようとしている。日本ではライブドアが販売していたこともあるLinspireの軌跡を追った。
現在Linspireの名称で知られるディストリビューションは、当初Lindowsとして立ち上げられたといういきさつを有するが、今回XandrosのCEOを務めるアンドレアス・ティパルドス氏から出された声明によると、ついにその命運が尽きる時を迎えることになったようだ。
XandrosによるLinspireの買収が行われたのは今年の夏が始まろうとしていたころの話である。そして今週(8月上旬)同社から出されたアナウンスは、コミュニティー版ディストリビューションのFreespire対する今後の変更として、次バージョンからは現在のUbuntuに変えてDebianベースに戻すこと、そしてXandros Desktop Professionalの母体として利用するという内容であった。こうしたFreespireの位置づけは、Red HatにおけるFedoraおよびSUSEにおけるopenSUSEと同様のものである。問題は、同社の方針として有料版のデスクトップディストリビューションを多角展開する意図はないため、結果的にLinspireがお役御免にされるということだ。
「Linspireに関する最大のメリットはMicrosoftとの間でコーデックに関する合意を交していたことですが、その有用性は既に失われています」とティパルドス氏は語る。「Linspireを買収した時点で弊社は、デスクトップブランドを3つ、異なるコードベースを2つ展開していました。エンジニアチームの主要スタッフとも検討した結果、開発努力を集中すべきであるとの結論に達し、コードベースを1本化した上でブランドも2つに絞り込むことにしたのです」
「FreespireをDebianベースに戻すのは、弊社で扱うすべてのデスクトップ製品でコードベースを1本化するためです」とティパルドス氏は説明する。「従来よりXandrosはDebianコミュニティーと緊密な協力体制下で活動を進めてきましたが、同コミュニティーでは安定性と一貫性の方が先端性よりも重要視されています。いずれにせよ、UbuntuそのものがDebianをベースとしているので、この切り替え自体はたいした変更ではないはずです」
今後Xandros Desktop ProfessionalおよびFreespireに関する開発活動は、Debianの“Lenny”コードベースを基にして進められていくことになるだろう。ただしティパルドス氏によると、Linspireを特徴づけるCNRクライアントなどの諸機能の幾つかはXandrosにも受け継がれるかもしれないとのことだ。
Linspireは当初Lindowsという名前がつけられており、「choice is good」のモットーを掲げてWindowsに挑戦したLinuxディストリビューションであったが、その名称についてはMicrosoft側が商標違反の訴えを起こしたため、Linspireに変更したという歴史を有している。またLinspireの創設者であるマイケル・ロバートソン氏はGPLのライセンス条項の取り扱いに関してFree Software Foundationとの間で一悶着を引き起こしたことのある人物であるが、あるいはLindows本体については“Wal-Martなどの大手量販店にてプリインストール状態で販売された最初のLinux”という肩書きの方が世に知られているかもしれない。
Tina Gaspersonは1998年よりフリーランスのライターとして活動中で、主要な業界紙にて記事を執筆している。
関連記事
- Linspire、「Linspire 6.0」をリリース
Microsoftとの提携以来初のバージョンアップとなるLinspire 6.0が、49.95ドルで発売された。 - Linspire、無料Linuxの新版「Freespire 2.0」リリース
オープンソースソフトに加え、サードパーティー製のソフトなども追加できるLinuxの新バージョンが登場した。 - Magi's View:Red HatがMicrosoftとの提携を必要としない理由
先週、Red HatとMicrosoftとの間に、MicrosoftがNovell、Xandros、Linspireにたきつけたのと同様の特許保護協定が締結される可能性があったようだが、だが、当のRed Hatはまったく関心を示していないようだ。それはなぜだろうか。 - 「日本初のLinux球団も」ライブドア堀江氏、吼える
9月29日から30日にかけて行われる「LinuxWorld C&D/Tokyo 2004」。開幕特別記念講演には、ライブドアの代表取締役社長兼最高経営責任者である堀江貴文氏が登場し、様々な体質について問題提起した。 - ライブドア、「Lindows」販売終了
鳴り物入りで登場した「Lindows」日本語版の販売が8月末に終了する。米Linspireとの契約が終了したためとしている。 - MS対Lindows訴訟、2000万ドルで決着
「Windows」の商標権をめぐって、MicrosoftとLindowsが世界各国で争っていた訴訟で和解合意が成立したLindowsは社名、製品名とも「Lindows」の名称使用を数カ月以内に中止し、「Linspire」の新名称に全面移行する。 - Lindows商標訴訟でMicrosoftに支払い命令
Windowsの商標権をめぐって米MicrosoftとLindowsが争っている訴訟で、オランダ地裁がMicrosoftに対し、Lindowsに訴訟費用などの支払いを命じた。Lindowsはベルギー、オランダ、ルクセンブルクの3国で、サイトを通じた製品販売を再開している。 - Lindowsの社名利用はMSの商標侵害に当たらず
アムステルダム地裁は、Lindowsを社名として利用することもWindows商標権の侵害に当たるとするMicrosoftの主張を退け、「ビジネスにLindowsの名称を使うことがすべてWindowsの商標権侵害に当たるわけではない」と指摘。(IDG) - Windows商標訴訟、米控訴裁がMSの抗告却下
米MicrosoftとLindowsが商標権をめぐって争っている訴訟で、米第9巡回区連邦控訴裁がMicrosoftの抗告を退けた。これにより、訴訟は連邦地裁に差し戻され、「Windows」の用語利用に関してLindows側に有利とみられる判断を示した判事が担当することになる。
Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.