「CRM2.0」はバズワードか――SaaSがもたらす新シナリオ:CRMの新潮流(2/2 ページ)
2007年からCRM市場成長率が再び2ケタ台に達している。ネットバブル以来のCRMの第2次ブームといえる。なぜ、ここに来てCRMが再注目されてきているのか。
BT(Behavioral Targeting)
行動ターゲティングによるデータの蓄積と活用である。ユーザーが意識的に入力したプロフィール情報のような静的なデータだけでなく、ユーザーの行動特性を意識させることなく取得した行動履歴データを蓄積して活用する。既に多くのユーザーが利用しているAmazonのレコメンデーションはこの代表例である。
CGM(Consumer Generated Media)
従来型のCRMにおいても、顧客にブログやSNSのコミュニティーを提供し、そこに書かれた内容を元に販促活動を展開するといったCGM活用例が存在する。CRM2.0においてはそれをさらに進め、商品企画など売り手側のプロセスまで踏み込んで顧客を参画させる点が大きく異なる。具体例としてはsalesforce.comの「Salesforce Ideas」が挙げられる。
SNS(Social Networking Service)
CRM運用側が作成したコミュニティーを利用させるだけでなく、顧客側に自発的にコミュニティーを創らせる仕組みを指す。これによって、従来のデモグラフィック(年齢や性別など)、ジオグラフィック(地理的特性)、サイコグラフィック(心理的特性)といった従来型のセグメンテーション手法では難しかったアプローチを実現できる。
特定のイベントに興味関心を持つ比較的短期間しか存続しない顧客集団に適切なタイミングで販促活動を掛けるといったことが例として挙げられる。社内の営業に対しては製造部門、開発部門、サポート部門といった部署の枠を越えたコラボレーション手段をSNSによって提供することで、営業活動をより迅速に行える仕組みを提供する。昔から優秀な営業担当者は他部門のキーマン達と親睦を深めているケースが多い。そうした達人のノウハウ実践をシステムとしてサポートする仕組みといえるだろう。こうした営業向けソリューションの例としてはOracleの「Oracle CRM on Demand Release 15」が挙げられる。
こうしたCRM2.0の各要素を実現するために最適なプラットフォームは何であろうか。CGMやSNSを展開しようとした場合、自社でブログやSNSサイトを開設することはもちろん可能である。しかし、ユーザーに新たなアカウント作成を求め、普段使っているブログやSNSサイトと異なる新たな場所での活動を強いることは避けるべきである。結果的に既に存在する各種サービスと連携させる必要が生じてくるからだ。
そうしたことを実現するにはSaaS型の運用形態が合う。上記の具体例に挙げたように、CRM2.0を先駆的に導入しているサービスの中にはSaaS型の運用形態を採用しているケースが多い。これが冒頭に述べた「なぜSaaS型CRMが注目されるのか」の答えでもある。
従来型CRMとCRM2.0の違い
以上を踏まえて、従来型CRMとCRM2.0の相違点をまとめると以下のようになる。高度なユーザーインタフェースによる利便性の向上、提供側と利用側の境界線があいまいになる、ユーザー同士が互いに結びつくといった点が目立つ。やや陳腐化した言葉ではあるが、これらはいずれもWeb2.0を特徴づけるポイントでもある。社外の顧客を相手にすることが主眼であるCRMは、ほかの社内情報システムと比べてWeb2.0との親和性が高いといえるだろう。
次回は、従来型CRMの変遷を辿りつつCRM2.0に至るまでのいきさつを眺めてみる。
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