真夏の夜にはトラブルが憑きもの、いや付きもの:悲しき女子ヘルプデスク物語(4/4 ページ)
「夜、PCが勝手に起動する」とか「だれもいないはずのオフィスからピアノの音が聞こえてくる」とか、わたしの会社にも七不思議がある。でもやめて。その手の話は苦手なんだからっ!
地縛霊、いやこの場合は磁縛霊か……?
ブラウン管タイプのテレビは電源を投入してしばらく待たされる。やがて、ぼわぁ〜んと画面が表示された。確かに、右下側に丸い影のようなものがある。横顔にも見えなくはないけれど、単に映りが悪くなっているだけとも思える。しかも、こんな感じの丸い影を、どこかで見たような気がする。どこだったかなあ……。
叔母の家の中に、この症状の「犯人」につながる、ある「モノ」があったかなあ、と考えるわたし。そこに叔母が話しかけてくる。
叔母 ね、やっぱり不気味でしょ? 人の横顔に見えるでしょ? 早くテレビを消したほうがいいよ。
どうしても怪談方面に結び付けたいようだ。そんな叔母をなだめた後、わたしはその「モノ」を探すために冷蔵庫へ向かう。ああ、やっぱりある。我が家と一緒で、かわいい形のものから普通の丸型まで5、6個のマグネットが。どこの家でも、冷蔵庫にチラシや冷蔵庫の中のもの、買い物リスト、ゴミの日カレンダーなどをマグネットで止めているものだ。そのうちの1つ、あるヒーローの顔になっているマグネットが子供の手に届きそうな位置にあった。なるほど、「犯人」も分かったぞ!
そのマグネットを持って、いとこと叔母が怖がっている居間に戻るわたし。「原因はこれだと思うよ」と2人にマグネットを差し出す。意表を突く展開に、2人はしばしボーゼン。
わたし 最近、これをテレビに近付けたりした?
いとこ そういえばこの間、ケンタが台所から持ってきて遊んでいたわ。そのマグネットで。
ケンタとは、いとこが連れてきた彼女の4歳の息子、つまりわたしの甥っ子の名前だ。
わたし ねえケンタ。テレビにくっ付けて遊んだ?
ケンタは素直に話し出す。どうやら、「くっ付いて離れない」ところと「くっ付けても離れてしまう」ところがあるということに、興味を持ったらしい。その「くっ付けた」中にテレビがあったのだ。テレビ画面にくっ付けようとしたら、近付けた画面の部分の色が変わったから面白かった、とまで「自白」してくれた。
というわけで、「犯人」は甥っ子、「モノ」はマグネットだった、というわけ。
こうして、この真夏の夜のテレビ騒動は終わりを告げた。そういえばブラウン管タイプのディスプレイには「消磁」というボタンがあったなあ。押したら画面がぐにゃぁん、とひずむやつ。あ、わたしの興味の対象は4歳児と一緒……?
後日談ではあるが、叔母は泣く泣く「イマドキの」液晶テレビを買った。同時にPCも「イマドキの」機種に新調された。本当に怖いのはそのための出費かもしれない。
しかし、有名なホラー映画のように、画面から何かが出てきたら怖いだろうな……。残業中にPCから表示されるワケの分からないエラーメッセージとどっちが怖いだろう。いや、帰り際に鳴る電話と、どっちが怖いかしら……。
ああ、そういえば。
「夜のサーバルームにあるPCが勝手に起動する」とか、「だれもいないはずのオフィスから突然ピアノの音が聞こえてくる」とかの種明かしをしておかなきゃ。カンのいい人は分かりますよね。Windows UpdateによってOSが更新され、自動的に再起動された、というのがその真相。自動ログオンの設定になっているマシンもあって、起動音「ぴんぽろぱんぽん、ぴんぽーん」というのが突然鳴り出す、というわけ。
でも確かに、真夜中に残業していて突然この音が鳴り響いたら、ビビるだろうな。
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