同業数社が在庫ネットワークで街ぐるみCRMを:CRMの新潮流(2/2 ページ)
書店にとって来店客は「ウチの客」であるばかりではなく、その界隈を訪れた「街の客」でもある。そんな顧客を「また来よう」と思わせる秘策とは――。
「書店の客」ではなく「街の客」
本や雑誌は、「どうしてもこの書店で買わなければ意味がない」というものではない。在庫データベースのネットワークがさらに広がれば、顧客は「神保町にいけば、とにかく目当ての本を短時間で手に入れることができる」と考えるようになる。三省堂やネットワークを利用している書店の狙いは、まさにここにある。三省堂は在庫ネットワークを利用する他の書店から、システムの利用料金は取るが、それ以外は基本的には料金等は発生しない。
日本有数の「本の街」神保町も、高齢化社会を迎え、変化していく必要があるという。時間がかかってもゆっくりと新刊書店、古書店をめぐって一日を過ごすという人たちが、かつての神保町の客だった。しかし、欲しい本はできるだけ早く手に入れてもらい、食事をしたり、買い物をしたりという客にもどんどん足を運んでもらわなければならない。
三省堂の構築したシステムは、同社の店舗を訪れた客だけに利用させることもできた。在庫を店舗に備え付けられた端末で調べ、求める本の在庫がなければ客は他の書店で仕切りなおしとなる。
CRMは顧客との関係性を問題とするが、ではその顧客は何を求めているのかを考えてみる必要がある。神保町を訪れる客は特定の書店に足を運ぶことを目的としない。街全体をさまざまな目的で動くわけだから、当然CRMは「書店の客」ではなく「街の客」なのである。
商店街の活性化などに共通のポイントカードを導入して活性化を試みる事例は、いくつか見られるようになっているが、今後は街ぐるみ、業界ぐるみで横断的なCRMが検討されるようになるのではないだろうか。
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