欧米でも変化しつつあるリーダーシップの中身:職場活性化術講座(2/2 ページ)
ITマネジャーにとって、リーダーシップという言葉はいつも意識する単語の1つだろう。しかし疲弊しつつある、あるいは疲弊しきってしまっている組織やチームをどう変えていくかという問題の解はそう簡単には出てこない。
リーダーシップの真骨頂
このようにリーダーシップの真骨頂は、彼らのコミュニケーション力にあるわけだ。コミュニケーションを通して部下や関係者の納得を得、企業の向かうべき方向、目標に向かわせていくことがカギとなる。このようなリーダーの役割とアプローチを総称して、リーダーシップ・コミュニケーションという。すなわち、リーダーがリーダーとして振る舞い、関係者を動かしていく際の基本的スキルなのだ。
実行力の優れたリーダーが出てくれば、定義上、みながやる気を持って組織の目標にコミットし、率先して協働し、成果を上げていくわけだから、個人も組織もWIN-WINの関係になることができる。
もっとも、この際のリーダーのコミュニケーションは、一方的な「伝達と恫喝」、「言い聞かせ」ではない。欧米では、特にリーダーといえばトップダウンで指揮を取るようなカリスマ型リーダーのイメージが強かったが、昨今のように複雑な環境の中でかなり軌道修正されつつある。変化の中で多様なメンバーを率いてゆくには、組織全体の方向付けや意欲付け、1人ひとりの自覚などが重要視されてきており、リーダーシップ観も急速に変化している。それゆえ、米国では、特にこのリーダーシップ・コミュニケーションについて多くの管理職や経営者が学んでいる。
日本では、ボトムアップ型の経営できたため、もともとリーダーなどという概念がないに等しい。小泉首相やゴーン氏が目立つゆえんだ。しかし、日本でも、スピーディに変化を乗り切るには、単純なボトムアップの積み上げ型ではさすがに機能しなくなっている。またボトムには戦略なき航海の中で、成果主義に追いまくられて被害者意識や指示待ちの姿勢が蔓延している。トップのビジョンが求められており、リーダーシップ・コミュニケーションを駆使して、それをいかにみなと共有し、当事者意識を持ってもらえるか。そして、もはや過去になりつつある、自立自走型の集団を再構築していくかが求められている。
このように、日本と欧米では前提となる環境や歴史は異なるものの、リーダーがリーダーとして機能していくためのリーダーシップ・コミュニケーションは世界的に注目されているわけだ。では、一体どのようなことがリーダーシップ・コミュニケーションに必要なのだろうか。ずばり「リーダーシップ・コミュニケーション」というタイトルの本(ボブ・メイ、アラン・エイカーソン著、ダイヤモンド社)によると、リーダーシップ・コミュニケーションには、3つのテーマと10の役割がある。それは、
1.コミュニティ開拓者
(ア)意義構築者
(イ)ストーリーテラー
(ウ)信頼構築者
2.ナビゲーター
(ア)針路設定者
(イ)変革のパイロット
(ウ)ネットワーク推進者
3.組織変革の仕掛け人
(ア)批評者
(イ)扇動者
(ウ)学習推進者
(エ)イノベーションコーチ
以上だ。この講座では、次回以降、これらについて順に解説してみたい。皆さんの職場が生き生きとしてくるためのヒントが得られるはずだ。
プロフィール
とくおか・こういちろう 日産自動車にて人事部門各部署を歴任。欧州日産出向。オックスフォード大学留学。1999年より、コミュニケーションコンサルティングで世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンに勤務。コミュニケーション、人事コンサルティング、職場活性化などに従事。多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所教授。著書に「人事異動」(新潮社)、「チームコーチングの技術」(ダイヤモンド社)、「シャドーワーク」(一條和生との共著、東洋経済新報社)など。
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