「日本代表」の重み背負い、Wordのスキルで世界に挑む――井原侑子さん:18歳女子学生の挑戦(2/2 ページ)
北京五輪の開催からさかのぼること1週間前、米ハワイ島で世界を相手に戦う1人の女子学生がいた。「日本代表」の重みを感じながら、Wordのスキルを競い合ったのは弱冠18歳の井原侑子さん。今年の4月に本格的にWordを学び始めたばかりだ。
厚かった世界の壁
現地時間の2008年7月31日から8月2日に、アメリカのハワイ島で決勝戦が開催された。世界47の国と地域から4万3738名のエントリーがあった。決勝戦に進んだのは44名。果敢に世界に挑んだニューヒロインだったが、壁は厚かった。結果は19位、入賞もかなわなかった。
慣れない英語圏での世界大会、「日本代表としてのプレッシャーもあった」と井原さん。さらに世界大会で出題された問題は特殊かつ難解だった。認定資格の「Specialist」よりも1ランク上のレベルの問題や、「普段の業務などではあまり使わない重箱の隅をつつくような特殊な問題」(篠木氏)も出てきた。初めて出くわす難問に戸惑いを隠せず、満足のいく結果は残せなかった。
だが「貴重な経験ができた」と話す井原さんの表情に曇りはない。Wordは、飾り付けや文字の強調などの機能を使って書類を作成するツールだと思っていたが、認定試験や世界大会を通じて、自分が知らない機能や使い方など、オフィスソフトの新たな魅力を発見できたからだ。「Wordがこんなにも奥深いとは思わなかった」という井原さんの言葉からは、今後の伸びしろが見て取れる。「Office製品のスキルを生かせるような仕事ができれば」。自然と次の目標も芽生えた。
大会で得られたものは自身のスキルやキャリアアップへの気づきだけにとどまらない。会場では英語が公用語。だが言葉を理解できず、最初は参加者の輪の中に入れなかった。しかし、話の中の単語を拾いながら、少しずつ話に参加していった。大会が終わる頃には、ほかの学生と買い物に行ったり、当時放送されていたドラマ「1リットルの涙」の話で盛り上がったりしていた。日本では得られなかった世界との接点と、そこに踏み込むための少しの勇気を手に入れることができた。
「実際に動かしてみると、機能が分かってくる。Wordを活用してみてください」――井原さんは未来の日本代表に向けてエールを送ってくれた。“Word素人”だった井原さんは、わずか数カ月で日本一の称号を背負い、世界で立派に戦い抜いた。そこに至るまでの道のりは偶然によるものが多かった。だが、この世界大会を通じて得られた経験は、彼女の今後を左右する重要な要素として深く刻みこまれたことだろう。
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