Google Chromeの輝きを曇らせたEULAとプライバシーへの懸念
「Chrome」はオープンソースアプリケーション開発のハイライトと言ってもいいだろう。だが、使用許諾契約書(EULA)に人々の疑心の目が向けられ、同社は直ちに対応せざるを得なかった。
GoogleのWebブラウザ「Chrome」はオープンソースアプリケーション開発のハイライトと言ってもいいだろう。だが、ユーザーがブラウザに入力した情報をGoogleが自由に扱える余地を残した使用許諾契約書(EULA)に人々の疑心の目が向けられ、同社は直ちに対応せざるを得なかった。またOmniboxについても、あまりGoogleにメリットがあるようにも思えないが、プライバシー侵害を懸念する声が高まっている。あなた、Google Chromeの使い心地はいかがですか?
Google Chromeを絶賛する声が渦巻くなか、企業ユーザーの間では、EULAの内容がGoogleにユーザーのソースコードやそのほかのプロプライエタリな情報まで勝手に取得することを許しているとの疑念が広がり、Googleは火消しに躍起になっている。
GoogleがWebブラウザのβ版を発表した9月2日の翌日、使用許諾契約書第11項に多くのユーザーから不満の声が出た。ブラウザに入力したデータに対して与えられるGoogleの権利があまりに大きすぎるというのだ。
匿名を条件にあるユーザーが話してくれたところによると、彼の会社ではChromeの利用が禁止されたという。
またそのユーザーが別の会社のセキュリティ担当者から聞いた話によると、やはり社内での利用が禁じられ、従業員はシステムからChromeを削除するように命じられたという。その理由について、彼はこう説明する。
「Googleのユーザーライセンスには、”このビュワーで閲覧したコンテンツはGoogleに所有権が付与される”といった受け入れがたい条項が含まれている。われわれの環境では、ソースコードやプロプライエタリな情報を含むPDFをオンラインで表示することもある。具体的にどのような問題があるかを確認するまで、Chromeのインストールは禁止せざるを得ない」
Googleは問題の条項を直ちに修正したが、以下はそのオリジナルの条文だ。
「コンテンツを送信、投稿、表示することにより、ユーザーは本サービスで、または本サービスを通じて送信、投稿、表示したコンテンツを再生、改作、改変、翻訳、公表、公開、配信できる恒久的、かつ取り消し不可能な、使用料が発生しない非排他的ライセンスをGoogleに付与する」
Googleの広報担当によると、同社はすでに第11条の文面を更新したが、この条項はGoogle製品一般に適用される同社の「サービス利用規約」から流用したものだという。
現在、第11条第1項は次のような記述になっている。「本サービスで、または本サービスを通じて送信、投稿、表示したコンテンツに対して、ユーザーがすでに保有する著作権、およびそのほかの権利は、ユーザーに帰属するものとする」
こうした変更は、わたしのポスターに誰かが後でこんなコメントを追加したようなものだ。「まぁ実物はこれほど酷くはないけど」
それはさておき、Googleはほかにも取り組むべき問題を幾つか抱えている。プライバシー問題もその1つだ。Googleは、アドレスバーと検索ボックスを組み合わせたChromeの「Omnibox」に入力された情報の2パーセントを保存しているという。
ただし保存の対象となるのは、ブラウザのデフォルト検索エンジンをGoogleに設定して、オートサジェスト機能をオンにしているユーザーのみである。
Googleの広報担当は「エントリーの多くは検索照会だが、われわれは以前から、どのようなブラウザでも、ユーザーが検索を実行するためにエンターキーを叩いた段階で基本的なログ情報を収集している」と説明する。
また、ユーザーはオートサジェスト機能をオフにするか、Incognito(シークレット)モードを利用すれば、Omniboxに入力した検索照会はGoogleのログに記録されないという。
個人的な意見だが、2パーセント程度の情報収集ならそれほど悪くはないだろう。Googleがわれわれの検索照会をトラッキングしていることは広く知られている。Omniboxだけが非難される理由があるだろうか?
監視されることが死ぬほど嫌なら、オートサジェスト機能をオフにすればよい。いちいちそんなことに悩む必要はないだろう。オートサジェスト機能にこだわらなければ、Googleに検索照会の些細な情報を提供することもなく、安心してブラウザを利用できるはずだ。
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