SGIがOpenGLのライセンスを変更 「フリーソフトウェアコミュニティーへの大きな贈り物」:Trend Insight(2/2 ページ)
SGIがOpenGLのライセンスを変更したことは、SunがJavaをフリーソフトウェアとしてリリースしたのと同じくらい大きな出来事である。そもそも何が問題で、それをどのように解決したかという事例として見ても、今回の出来事は参考になる点が多い。
解決策
FSFはSGIにさまざまな解決策を提案した――問題の条項をライセンスから削除する、ライセンスを全面的に書き直す、関連する各ソフトウェアに第2のライセンスとしてフリーライセンスをつけデュアルライセンスにする、ライセンスを作成したときにSGIが危ぐしていた特許侵害の可能性の責任を引き継ぐ第三者にコードを譲渡する、など。
FSFは、当初から、誰もが満足する最も単純な解決策を探そうとした。SGIがリリースしたOpenGLコードの多くが数年前に書かれた古いものだったから、これは特に重要なことだった。コードが古いため、その来歴を調べて、それに適用されるライセンスを確かめ、そのどこを変更すべきかを考えるというのは困難な作業だ。多くのケースで、コードの来歴やライセンスは明らかではなかった。
スミス氏は「何年も前にSGIコードに携わった契約会社を探し出し、各ファイルのライセンスについて何か覚えているかどうかを尋ねた。しかし、結局、影響するものすべてが『OpenGL関連』であるとせざるをえなかった」。ありそうなことではあるが、思わず確かめたくなるような結論だった。
最終的に、SGIは両ライセンスの改訂条項を利用することにした。この条項はGNU General Public Licenseの該当条項に似ているが、GPLとは異なり自動的だ。つまり、SGI Free License BやGLX Public Licenseの改訂が公表されると、その利用者には選択の余地なく自動的に改訂版が適用されるのだ。
この改訂条項を利用して、SGIはライセンスの文言をMITライセンス(X11ライセンス)に基づくものに差し替えることを決定した。これによりSGIは自社が著作権を持つコードを完全なフリーライセンスの下でリリースでき、また改訂条項の規定により、関連ライセンスを探して変更するという手間を掛けずに済ませることができた。新しい文言のライセンスが公表されれば、ライセンス問題はその瞬間に、何の差し障りもなく解消する。
コミュニティーへの贈りもの
こうした作業にかかわっていない人から見ると、なぜこんな簡単な解決策に9カ月もかかったのかと不思議に思える。これについて、ブラウン氏は次のように説明している。「あらゆる方法を検討し、SGIの弁護士が問題を精査する必要があったからだ。もろもろのことを考え合わせれば9カ月でも早かったと思う。無意味な話し合いだと思ったことは一度もないし、SGIにとっては日常業務にはない煩雑な問題であり、そのため勝手が分からなかった。問題の重要性を理解するところから始めなければならなかったのだ。そして、いったん理解すると、SGIは利用者のコミュニティーのために行動しようとした」
最後に、ブラウン氏は次のように述べた。「SGIには大きな感謝を捧げる。この問題がフリーソフトウェアコミュニティーに引き起こしつつあった大きな痛みを分かってもらうのは本当に大変だった。問題のライセンスは、GNU/Linuxの基礎となるコードにとって死命を制するものなのだ。SGIはコミュニティーの素晴らしいメンバーであることを証明したと思う。SunがJavaをフリーソフトウェアとしてリリースしたのに似て、これはフリーソフトウェアコミュニティーにとって大きな贈り物だ」
Bruce Byfield コンピュータ・ジャーナリスト。Linux.comによく執筆している。
関連記事
- Mozilla、Firefoxの利用許諾を見直し
MozillaはLinuxユーザーからの批判を受けて、Firefoxのエンドユーザー使用許諾契約を修正、さらに見直しを続けている。 - Google Chromeの輝きを曇らせたEULAとプライバシーへの懸念
「Chrome」はオープンソースアプリケーション開発のハイライトと言ってもいいだろう。だが、使用許諾契約書(EULA)に人々の疑心の目が向けられ、同社は直ちに対応せざるを得なかった。 - 開発者は譲渡した知的財産権を取り戻せるか
Gentoo Linuxで発生しかけた問題は、いったん譲渡した知的財産権を再取得することは可能なのかという興味深い疑問をわたしに提起してくれた。
Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.