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無線LANの実パフォーマンスを測定せよ【前編】計る測る量るスペック調査隊(2/2 ページ)

無線LANの伝送速度は、IEEE802.11b規格で最大11Mbps、802.11aやgでは最大54Mbpsといわれている。しかし、実際に無線LANを使用すると分かるように規格どおりの速度が出るわけではない。これはなぜなのだろうか。今回から3回に分けて無線LANのパフォーマンスの実際について探ってみよう。

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フレームの再送数を測れ――フレーム再送実験

 実験では外来ノイズのない理想的な環境と実環境のそれぞれでフレームを送信し、どの程度再送が発生するのかを測定した。この実験では、Azimuth製のAzimuth Wシリーズ(Azimuth)を使用した(今回の実験機器)。Azimuthではシールドボックス中に無線LANデバイスを収納し、収納された各デバイスをRF同軸ケーブルを用いて物理的に接続することで、外部からまったくノイズが入らない理想的な環境が実現できる。

 また、実環境での実験は東陽テクニカのネットワークトレーニングセンターで行った。ほかに使用される機材もなく、実環境としては比較的クリーンと考えられる場所である。アクセスポイントから無線LANクライアントまでの距離は3メートル程度と、比較的近距離に設定した。

 そのほか、無線LANアナライザとして米AirMagnet製のAirMagnet LAPTOPを、実環境でのイーサネットフレーム生成に米ClearSight Networks製のLANアナライザであるClearSightを利用した。ClearSightは本来はフレームをキャプチャして解析するものだが、非常に高いパフォーマンスや精度を要求しなければ、簡単に使えるトラフィックジェネレータになる。なお、理想的な環境ではAzimuthのフレーム生成機能を使用した。使用した無線LANアクセスポイントおよびNICはバッファローのWHR-HP-G54/Pだ。

今回の実験機器

Azimuth Wシリーズ

Azimuth Wシリーズ

  • Azimuth 800ワット 8スロットシャーシ
  • ステーションテストモジュール(STM)×2
  • アクセスポイントミニテストヘッド MTH-102×2
  • Azimuth DIRECTOR

 無線LANパフォーマンス評価システム。802.11無線LANアクセスポイント、クライアント、そのほかのデバイスをシステムレベルでテストできる、無線LAN専用の業界標準テストプラットフォーム。外部からのノイズなどを完全に遮断するシャーシを備えており、理想的な環境で無線LAN機器をテストできる。

 無線LAN専用のLANアナライザ。今回の実験では再送フレームのカウント、送信されたフレームの伝送レートの確認のために使用する。

 イーサネット用のLANアナライザ。パケットジェネレータ機能を備えており、今回の実験では実環境でのフレーム生成に使用。


 実験は図2に示すように、イーサネット(100BASE-TX)で接続されているトラフィックジェネレータからアクセスポイントを経由するように無線LAN NICあてのフレームを送信し、無線LANアクセスポイントとNICの間で再送されたフレーム*をAirMagnet LAPTOPでカウントすることで行った。実験の条件は以下のとおりだ。

総送信フレーム数:1000フレーム

フレーム送信速度:約5フレーム/秒

フレームサイズ:64、512、1518バイト


フレーム再送実験の実験環境
図2 フレーム再送実験の実験環境

 なお、フレームサイズとして、イーサネットの最小フレームサイズである64バイト、最大フレームサイズの1518バイト、そして中間の512バイトを使用した。フレームサイズを変えて実験する理由は、フレームサイズが大きいほどエラーとなる可能性が高くなり、その結果再送されるフレームの比率が高くなると考えられるからである。フレームサイズが大きくなると1フレームを送信する時間も長くなるため、ノイズの影響を受ける可能性が高くなるほか、1フレーム当たりのオクテット数*も多くなり、ビットエラーを引き起こす可能性も高くなると思われる。

実験結果

フレーム再送実験の実験結果
図3 フレーム再送実験の実験結果

 それでは実験結果を見てみよう。図3がそれぞれの実験環境における、再送フレーム数のグラフだ。予想どおり、送信するフレームの条件が同じであっても環境によって再送される比率は大きく異なった。理想的な環境では外部からのノイズをほぼ完全に遮断し、アクセスポイントと無線LANカードの伝搬上の距離を適切なものにしてある。そのため、ほとんどのフレームが完全な形で受信され、ほぼ再送はゼロであった。それに対して、実環境では20%前後のフレームに対して再送が行われている。

 フレームサイズと再送されるフレームの比率については関連性は見られるものの、大きく寄与しているという結果にはならなかった。フレームサイズが大きくなると再送されるフレームの比率が増えるという予想であったが、実際には多少その傾向が見られる、という程度であった。

 これらの結果から、実環境ではある程度フレームの再送が発生し、それによって伝送速度が低下することが分かる。

 無線LANの実パフォーマンスを測定せよ【中編】では、無線LANとイーサネットで異なるメディアアクセス制御の仕組みがパフォーマンスにどの程度影響を与えるのかを追跡調査する。

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再送フレーム

再送されたフレームのヘッダには、そのフレームが再送されたものであることを示すビットが付加される。

オクテット数

ビット数を数えるための単位。8ビット=1オクテット。「オクテット」は一般には「バイト」と同義だが、ネットワーク分野では明確に「8ビット」を表すためにこの単位が使用されることが多い。


本記事は、オープンソースマガジン2006年5月号「計る測る量るスペック調査隊 第6回 無線LANの実パフォーマンスを測れ!」を最新の情報を踏まえて再構成したものです。


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