クラウドに賭けることができるか?:雲の向こうは天国か地獄か(5/5 ページ)
クラウドが勢いを増している。インターネットという雲にあらゆるものを置いてしまうというモデルは、特にシステム投資力の弱い中小企業にうってつけだ。ただ大企業が本格導入するには「サービス停止」というリスクの評価が必要になる。
クラウド時代へ向けて
業界のビッグプレーヤーたちがクラウドパラダイムを受け入れるためのスキル向上とマーケティング戦略の構築に余念がない中、機敏な小企業群はクラウドユーザーに提供するユーティリティやサービスの開発に全速力で取り組んでいる。TC3のケースでは、RightScaleがAmazon.comのEC3上で稼働する拡張性の高いアプリケーションの構築を手助けした。
RightScaleはまた、AWSのクラウドサービスを構成、起動、監視できるダッシュボードを提供している。クラウドサービスに関しては信頼性がしばしば問題視されるため、こうしたモニタリングツールは重要な役割を担いつつある。
大規模Web環境を管理するためのツールを販売するHypericは、さきごろAWSのサービスレベルを監視するツール「CloudStatus」のβ版を発表した。「クラウドプラットフォームは素晴らしいが、オンプレミスのインフラストラクチャにモニタリングと管理機能は必要だ」とHypericのCEO、ジャヴィア・ソルテロ氏は語る。
ソルテロ氏はまた、AWSのサービス停止とAmazon.comの報告には時間差があると指摘する。同氏によると、AWSが最近苦しんだS3のサービス停止時、CloudStatusはAmazonよりも20分も早く、Twitterを通じてユーザーに異常を通知したという。
一方、クラウドサービスを統合するツールもベンダー2社が提供している。
創業間もないKaavoは、現在β版のIMOD(Infrastructure and Middleware on Demand)を提供している。このツールを利用すれば、AWSの異なるEC2およびS3サービスを1つのブラウザに統合できるという。
中小企業向けの統合化アプリケーション専業ベンダーであるBoomiは、さきごろ単一のWebインタフェースで異なるSaaS製品を統合できるBoomi On Demandを発表した。
アプリケーションとユーティリティの急速な発展がPC時代を切り拓いたように、クラウドエコシステムにおけるこうしたツールの急速な台頭がクラウド現象のパワーをさらに増幅することは間違いない。だが、イントラクラウドの構築に積極的な大企業でも、彼らの目を商用クラウドに向けさせるには、まだ十分とはいえないかもしれない。
「プライベートクラウドは今後も成長を続けるだろう。大企業がパブリッククラウドを信用するまでには、まだ時間がかかる」と、Xcalibreのハバー氏は言う。
しかし、イントラクラウドはクラウドの全体像のほんの一部にすぎないことも事実だ。大企業の市場性とベンチャーキャピタルの旺盛な投資活動を考えれば、この先、クラウドコンピューティングプロバイダーの増殖はもとより、新しい時代の波が次第に大きなうねりとなって広がっていくことは確実だろう。
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