ファイル転送サービス「OnTranq」発売 1000万円からのEDIも実現:SaaSの不安も払しょく
機密性の高いファイル転送を実現する「OnTranq」をインフォテリア・オンラインが発売した。ファイルを送受信するPCに専用ソフトをインストールすれば利用でき、拠点間における簡易的な電子データ交換のサービスとしても活用できる。
インフォテリア・オンラインは10月9日、電子メールや添付ファイルを同社のデータセンターで一時的に預かり、転送するサービスの提供を開始した。企業の本部と拠点間、パートナー企業間などで個人情報や売り上げ、契約書などの重要なデータを転送するのに適している。
同サービスは「OnTranq」という。電子メールを使うような操作感でファイル転送ができるサービス。電子メールやFTP、VPN(仮想私設網)によるファイルのやり取りを代替できるのが特徴だ。
専用のソフトウェアを送受信側のクライアントPCにインストールすると、ファイルの転送ができる。ファイルはデジタル証明書で暗号化され、インターネット上の一時保管場所「トランク」に格納される。格納したファイルは128ビットのSSL通信で暗号化された専用ソフトウェア間の通信網を通り、相手に届く。受信した時点で一時的に格納したファイルは消去される。
「SaaS(サービスとしてのソフトウェア)などのファイル転送はデータを社外に置くため、改ざんなどの心配も出てくる。こうした不安を払しょくできる」――藤縄智春社長はファイル転送の機密性に自信をのぞかせる。
OnTranqの専用ソフトウェアは、システムを自動で連携する機能を持つ。専用のプログラムを開発せずに簡単な設定をするだけで、「フォルダを監視して送信」「受信したファイルをフォルダに保存」「FTP、外部プログラムを実行」といった処理ができる。
あて先を間違っても相手がファイルを開く前に転送の取り消しができる機能や、同一ファイルを複数のあて先に一斉送信する機能も備えた。
ファイルを保管できる容量が100Mバイト「OnTranq 100M」と1Gバイトの「OnTranq 1G」、無制限の「OnTranq Unlimited」を用意している。価格は以下の通り。対応するOSは、Windows XP Service Pack 2以上、Windows Vista、Mac OS X 10.4, 10.5。
サービス名 | 初期費用 | 月額 | 年額 |
---|---|---|---|
OnTranq 100M | ― | 3000円 | 3万円 |
OnTranq 1G | ― | 3万円 | 30万円 |
OnTranq Unlimited | 500万円から | ― | 500万円から |
EDIとしての利用、1000万円から
同サービスは、企業間のシステムを連携する電子データ交換(EDI)システムとしても利用できる。海外に取引先を持つ企業は、資料を共有する場合に、異なるシステムを使っている場合が多い。データ交換の方法を統一させることが難しく、専用のシステムを構築する場合「3000〜5000万円が必要になる」(藤縄社長)。コスト面がEDI普及の壁になっている。
転送できるデータの容量と接続先が無制限のOnTranq Unlimited(1000万円から)を使うと、「通常のEDIに比べて3分の1以下のコストでデータ連携が実現する」(藤縄社長)。連携先の企業は、専用のソフトウェアをインストールするだけでファイルの送受信ができるようになる。
OnTranqは米国でも同日に提供を開始し、「拠点が多い海外でも使えるようにした」と藤縄社長。「今後は中国版のサービスも開発する。海外で使われる製品を日本のベンダーが打ち出していきたい」と意気込む。
同社は昨年、オンライン表計算アプリケーション「OnSheet」を発表して、企業向けサービスに乗り出した。藤縄社長は記者発表会で「ワークスタイルを変える企業向けサービスを本年度に2、3本発表する」と表明し、B2B事業の拡大に含みを持たせた。
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