定着している「職場のウソ」を把握せよ:職場活性化術講座(2/2 ページ)
信頼されるリーダーの条件は「有言実行」である。言っていることと行動が逆であったりすれば、それは「職場のウソ」として定着してしまう。
職場にはびこるウソとは
では信頼されているリーダーとはどういうものなのか。それは、その能力に信頼を寄せられているだけではなく、その価値観が理解され尊重されている人物のことなのだ。そこから見えてくるのは、そのリーダーの「分かりやすさ」ということである。「顔の見えるリーダー」が重要となる所以だ。そこからリーダーに求められるいくつかの重要な要素が抽出されてくる。
まず「気さくさ」が大事だ。気さくな姿勢は、人々の気持ちを和ませ、難しい課題や難局に直面しても挑戦していこうという気分を盛り上げる。どんなにひどいことを言われても、やはり気さくな姿勢でいるリーダーから言われれば、「まぁ、しょうがないか」と我々のハードルは低くなる。逆の場合は、疑いの眼で見られることになる。気さくな姿勢とは、どういうところから出てくるのだろうか。それは、根の明るさ、挨拶を元気よく交わすこと、難しい言葉(専門用語や抽象的な言葉など)を使わないこと、流行語を連発し知識をひけらかさないことなどだ。脇の甘さを見せること、近寄りがたい雰囲気を出さないこと、いつも忙しそうにしていないことなども重要な要件だ。最近は、「不機嫌な職場」が増えているようだが、気さくさがどんどん減っているのではないだろうか。
また、自分の価値観が見えるようにするためにはどうしたらよいだろうか。ここで大事なことは3つある。1つ目は、まず物理的に顔が見え、フェーストゥフェースの会話が多く、人となりが分かること。職場に足を運んだり、飲み会をもつのも重要だ。2つ目には、「自分の言葉」で語ること。受け売りや専門用語やカタカナ言葉ではなく、現場に応じた「自分の思い」のこもった言葉が必要だ。言葉が踊らずに、メッセージを腑に落ちるように伝えることができる。そして3つ目が、その言葉を有言実行することだ。あなたの会社には決して実行されない、あるいは本当は誰も信じていない「職場のウソ」はないだろうか。例えば次のようなものだ。
- 社員は会社の最も重要な財産だ
- 私はどんな忙しいときでも部下の話を聞く
- 今年の目標が達成されれば、労働条件は改善される
- 今回の組織改正は、顧客満足度を上げることが目的だ
- 計画は着実に実行されている
- リスクテイクする人を評価するので、気にせずに挑戦してほしい
- 悪いニュースをどんどん言ってほしい。それで処分したりはしない。
- 社員の意見が最も重要だ。
- 研修は非常に大事なので、どんなに忙しい時にも行きたいものが遠慮なく申請してほしい。
- わが社の社員は最高だ。
このように、会社には、現実には実行されていない、信じられていないにも関わらず、はびこる言葉がある。皆さんの職場ではいくつ当てはまっているだろうか。部下や周囲の人たちは皆さんがどれだけ有言実行しているかで信頼感を測っている。そして皆さんの持つ価値観が信頼に足りるものかをチェックしている。
信頼は短期には醸成されない。しかし何もアクションしなくては、崩れていくばかりで維持することすら難しい。まずは気さくな態度が取れるよう、自分の気分を明るくすることから始めるのも手かもしれない。
プロフィール
とくおか・こういちろう 日産自動車にて人事部門各部署を歴任。欧州日産出向。オックスフォード大学留学。1999年より、コミュニケーションコンサルティングで世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンに勤務。コミュニケーション、人事コンサルティング、職場活性化などに従事。多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所教授。著書に「人事異動」(新潮社)、「チームコーチングの技術」(ダイヤモンド社)、「シャドーワーク」(一條和生との共著、東洋経済新報社)など。
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