現場主義、ビジネス視点、無償――インフォアのERP差別化戦略:Inforum 2008 Report(2/2 ページ)
ラスベガスで開催された米Infor主催のカンファレンス「Inforum 2008」では、Inforが軸とする3つのソリューション戦略が明らかになった。企業はこれらの戦略をどう評価し、注目すべきだろうか。
既存のInfor ERPからInfor ESBを介して、新たにリリースされるマルチ総勘定元帳コンポーネントが複数の勘定コード体系を相互に関連付けながら多通貨、多言語で管理し、システムの共通的な窓口となるInfor MyDayから透過的に見える仕組みを実現する。Infor MyDayは、今後の同社アプリケーション群における統合フロントエンドサービスであり、役割ベースで機能が充実されていく予定である。なお、BIS(Business Information Services)は、Infor Open SOAにおけるデータレポジトリーとなる。
また、最大のポイントは、すでにLXやLNなどの製品を導入している企業であれば、Infor MyDayやマルチ総勘定元帳といったSOAコンポーネントを、基本的には新たなライセンスの購入なく無償で利用できることにある。例えば、既に100ユーザー分のライセンスを購入しており、追加するSOAコンポーネントの利用者が100ユーザー以内であれば、新たなライセンス購入は不要となる。ただし、120ユーザーとなると追加で20名分のライセンスが必要となる。また、Infor ESBを介して他社の製品と連携し、他社製品側で追加ライセンスが必要になった場合は別途購入となる点には注意が必要である。
最後に、「柔軟に実装できるSaaS型アプリケーション」は、「作る(自社開発)「買う(パッケージ導入)」に加えて、「利用する」選択肢の提供である。「Infor ERP Syteline SaaS」「Infor EAM SaaS」「Infor Expense Management SaaS」の3製品が発表され、オンプレミス、SaaS、SaaS Hostedの3つの形態が用意されている。SaaS Hostedは、月額であることはSaaSと同様だが、従来型ERPパッケージのメリットを残しつつ、システムの運用を委託する方式である。SaaSとホスティングには、以下のような一般的な特徴がある(図2)。
ホスティングは、新たに拡張されていくERPパッケージの機能要件に対応しながら、安定期に入った既存システムをアウトソーシングする手法として従来から有効であり、Inforが、ホスティングをサービスメニューに加えて、所有しつつ利用したいとする顧客の選択肢に応えたことは評価できる。
企業はInforの新たな戦略をどう評価し注目すべきか
Inforは、ここ数年で多くの製品を買収してきたこともあり、規模的にはグローバル第3位のERPベンダーとなった。その反面、買収した製品間に統一性が見られない、相乗効果も見込めないのではないかといった懸念も指摘されていた。そして、「MAPICS」「LN」「LX」など生産管理で導入されてきたERPパッケージは、各国各地の製造拠点単位で個別にシステム化が検討され、現地で利用可能なシステムインテグレーターが納期優先で導入を行ってきたため、グローバルでIT部門の統制も効いておらず、システムが見えない状況となっているといった痛みも少なからずあった。顧客は、新たな一手としての今後の方向性が明確化されるのを待ち望んでいたともいえる。
SOAやSaaSというキーワード自体には目新しさがなく、一見すると先行する他のベンダーが提唱し提供し始めているソリューションと大差ないように思われ、後発の印象も受ける。しかし、Inforが目指すSOA象は顧客の既存投資を守りつつ、新たな拡張性の選択肢を具体化したものであり、今後ソリューションとして提供されていくであろうEvolveコンポーネントは、「Model Centrally & Execute Locally」をキーワードに、柔軟で適応性の高い企業アプリケーションを目指すものとして高く評価できる。
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