MySQLのパワーを最大限に生かすサン
MySQLユーザーカンファレンスでは、アメブロやココログといった国内大手のサービスプロバイダーがMySQLへの移行の理由を説明するなど、活気に満ちていた。サンはこの流れをどう見ているのかを聞いた。
「Sunのファンは減ってはいないと感じている。そのカバレッジを広げ、開発者を支援していきたいし、逆にそうしたコミュニティーから助言をいただけると考える」――10月30日、31日にかけてサン・マイクロシステムズが主催している「MySQLユーザーカンファレンス」のプレス向けラウンドテーブルで、サンのMySQLビジネス統括本部統括本部長を務める矢崎博雅執行役員はこう話し、買収したMySQLについてあらためて語った。
10年先を考えた選択
SunがMySQLの買収を発表してまもなく10カ月がたとうとしている。この間、Sunが持つ販売網などのインフラを使ってMySQLの市場に与える影響力は確実に上昇した。「10年先を考えたとき、システムは必ず変化している。技術の新たなイノベーションに追従するためのDBを持っておく意義は大きい」と矢崎氏。「年々2倍以上の売り上げ増」(矢崎氏)と、ビジネスとしても順調に推移しているという。
「早い、安い、使い勝手がよい」ことからすでにグローバルで多彩な導入実績を持つMySQL。コミュニティー版も含めて考えれば、その数は枚挙にいとまがない。今回のカンファレンスでも、Ameba(アメブロ)を手掛けるサイバーエージェント、そして「ココログ」を手掛けるニフティといった国内大手のサービスプロバイダーなどがほかのDBからMySQLに移行した理由を語るセッションが設けられている。矢崎氏は「開発環境ではMySQLも標準的に用いられている。このことは大きな意味がある。それが本番環境に移行したとき、Sunが提供するサービスやサポートが求められるかもしれないからだ」と引き続き今の傾向が続くだろうと予想した。
MySQLの適用分野も増えてきたという。例えば、単位時間当たりのトランザクションが命の通信業界では、“重いDBはダメ”といわれ続けてきたが、米国の通信業界ではほとんどのプレーヤーがMySQLを選択していると明かし、そうした実力を持っていることをあらためて説いた。
「残念ながら日本を含めたアジア圏の通信業界ではまだそういった状況ではないが、増え続けるサービスとそこから得られる収益とのコスト的なバランスから、『ここは(MySQLでも)大丈夫だろう』という部分からMySQLの検証が進んでいくだろう。すでに日本でも通信キャリアおよびそれに関連するベンダーとの話し合いを進めている」(矢崎氏)
開発は順調
SunのDBグループでシニアプロダクトマーケティングマネジャーを務めるジミー・ゲレロ氏からは、MySQLの開発の方向性についての解説が行われた。
現在、MySQLはバージョン5.0がGenerally Available(GA)となっている。今後、直近ではバージョン5.1が、そしてバージョン6のリリースも着々と進行している。ゲレロ氏はバージョン5.1での機能強化のポイントとして、テーブルを分割することでスケールアップを可能にする「パーティショニング」のほか、従来のクラスター環境ではメモリ上に保持させていたDBをディスクベースで処理することでバックアップを可能にする技術などを挙げる。
バージョン5.1ではレプリケーション機能にも選択肢が用意された。MySQLでは非同期型のレプリケーションをサポートしているが、ここで用いられているステートメントベースレプリケーション(SBR)と呼ばれる手法は、その仕組み上、マスターとスレーブの間にデータの不整合が生じていた。そこでバージョン5.1では、SQLステートメントをスレーブ側で再度実行するのではなく、書き込まれた行そのものをレプリケーションする「行ベースレプリケーション」(RBR:Row BASEd Replication)が実装され、ユーザーはSBRとRBRのどちらか、もしくは両方を組み合わせて利用できる。
そしてバージョン6.0では、新たなストレージエンジンとして実装される「Falcon」にも期待しているという。MySQLではInnoDBに代表されるストレージエンジンを自由に選択できるが、トランザクションをサポートするFalconの登場により、MySQLの適用範囲の広がりが予想される。MySQLではストレージエンジンを問わないオンラインバックアップの実装もバージョン6.0で予定するなど、開発の方向性が妥当であるとゲレロ氏は話した。
オープンソースのDBはほかのDBをけなすためにあるためではない
以下は、幾つかの質問を両名に聞いたもの。
―― 先日、MySQLの共同創業者であるデビッド・アックスマーク氏がSunを退社しました。8月には、MySQLの日本法人を率いていたラリー・ステフォニック氏もSunを退社しています。実際のところ、Sunの中では今どういった状況なのでしょうか。
矢崎 MySQLの文化は“フリーダム”といえるのかもしれない(笑)。それがこうしてビジネスという新たなフレームワークの下でも活動するようになった。これまでになかったようなことにも対応する必要に迫られ、いわばアンバランスな状態でありながらもハイレベルなミッションに取り組みことにやりがいを感じる人間は多い。
開発が次のフェーズに進んだことで、自らは違う形でMySQLにかかわりたいと思う人間もいる。ただ、わたしも長く外資系企業で働いているが、MySQLだった従業員はしっかりと残っているなと感じている。去りゆく人間も、ただ単に去るだけでないところにMySQLという企業の素晴らしさを感じている。彼らは、自らがMySQLのコードに確かな軌跡を残し、さらに同じことができるような後進をしっかりと育て、それから去っているのだ。
―― ほかのDB製品との差異をどう考えますか? 例えば米EnterpriseDBという企業は、OracleからPostgreSQLへの移行をサポートする製品群を持っています。Oracleなどの商用UNIXから移行するユーザー、もしくは移行させるための戦術は?
矢崎 まずはっきりさせておきたいのは、オープンソースのDBは「商用UNIXをはじめほかのDBをけなすためにあるためではない」ということ。ほかを食って生き残るというのは違う。
このことは、DBごとの違いとその適用範囲をユーザーも理解していく必要があるということ。われわれとしては(MySQLへの移行について)能動的なプロモーションを考えてはいない。しかし、ユーザーが望むならいつでも検証できるようにしておくべきであるとは考える。そのためのコミュニティー版である。
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