AmazonもFacebookも――force.comですべてがクラウド環境に:Dreamforce 2008 Report
サンフランシスコで開幕したSalesforce.comの年次イベント「Dreamforce 2008」。基調講演を行ったマーク・ベニオフCEOはAmazonやFacebookなどとのパートナーシップを強調しつつクラウド環境の先行者としてMicrosoftに対する余裕も見せた。
米国時間の2008年11月3日、サンフランシスコのモスコーンコンベンションセンターで、Salesforce.comの年次カンファレンスイベント「Dreamforce 2008」が開幕した。オープニングのキーノートセッションの舞台には「一年のうちでこのDreamforceの開幕の日が一番好き」と話すマーク・ベニオフCEOが登壇した。
世界的に経済が「クレイジーな状況」にあるが、クラウドコンピューティングにとってはまさに成長の時だとベニオフ氏。彼らの顧客からは、こんな状況こそSalesforce.comにはがんばってもらい、業界を変革して欲しいとの要望が、多数寄せられているという。それに応えるためにも「クラウドコンピューティングというものの先入観を、このイベントで大きく変る」とベニオフ氏は話す。
「クラウドの中にはさまざまなアプリケーションがあり、プラットホームまでもがそこにあるのが、新しい流れとなっている」とベニオフ氏。SaaS型のCRMのアプリケーションに加え、AppExchangeという形でさまざまなアプリケーションがあり、そしてforce.comというプラットホームまでもがクラウドの中にある。これこそが、他社に対する優位性だと強調する。
「先日、Microsoftがクラウド分野に進出するとの発表があった。Windows Azureが実際に何をやろうとしているのかは、まったく見当がつかないが、あのMicrosoftが『クラウドをやる!』と宣言したことはうれしい限りだ」というベニオフ氏の発言は、すでにクラウドコンピューティングでリードしている余裕すら感じさせるもので、会場は大いに沸いた。
企業のすべての仕組みをクラウドへ
昨年のDreamforceでクラウド上のプラットホームforce.comを発表し、次のステップとして用意されたのが、今回発表となったforce.com siteだ。従来のforce.comはイントラネットで利用するもので、社内業務をクラウド上に持っていく。これに対しforce.com siteは、外向きのWebサイトやWebアプリケーションをSalesforce.comの仕組みで実現する。
「皆さんの会社を変えるときがきた。社内ポータルや業務アプリケーション、さらには、外向けのWebサイトなど、あらゆるものがクラウド環境に載る」(ベニオフ氏)
今回のDreamforceのレジストレーションサイトも、このforce.com siteで構築されている。その仕組みについても、ライブデモで紹介された。例えばセッションタイトルを変更すると、結果はすぐに外向けのWebサイトに反映される。これはSalesforce.comのイベント管理アプリケーションによるもの。さらに、iPhoneやBlackberryなど携帯端末用のサイト表示も同時に変更されることが示された。ユーザーは、htmlや携帯端末用のサイト構築に関するスキルがなくても、従来通りにSalesforce.comのアプリケーションを利用するだけで、外向けのWebサイトを容易に管理できるという。
すでにこの仕組みはSalesforce.comだけでなく、New Jersey Transit(米国の交通機関)のスケジュール情報発信のWebサイトや、ラスベガスにあるHARRAHS Casino HotelのWebサイトで提供されるコンシェルジュサービスでも利用されているとのこと。その様子もライブデモで紹介され、すでに実用段階であることが示された。
「もはや、Webサイトを作るために、自社でハードウェアを用意したりアプリケーションサーバをセットアップしたりする必要はない。社内ポータル構築のためにSharePoint Serverを導入することもない」とベニオフ氏。企業が必要とするものすべてを、force.com siteで実現できるとあらためて強調した。
クラウドでの意義のあるパートナーシップ
force.comのクラウド上のプラットホーム機能を活用する、新たな2つのパートナーシップについての発表もあった。それがFoce.com for FacebookとForce.com for Amazon WebServicesの2つだ。
「Microsoftがクラウドについての大きな発表をしなければならなかったのは、各社が先行してさまざまなサービスをクラウドで提供しているこの状況を危惧したからだ。しかし、1つのベンダーがすべてを提供するというのでは、うまくいかない」とベニオフ氏は話す。「Microsoftがクラウド上でもすべてを独占しようとしている」(ベニオフ氏)
Salesforce.comは、自社だけですべてが完結するとは考えていないようだ。すでにGoogleと提携し、Google AdwordsやGoogle AppsをSalesforce.comの仕組みと連携させ、利用できるようにしてきた。今回はさらに、SNSのFacebookとの連携を実現、FacebookのAPIを用い2つのサービスを完全に統合できるようにした。
ステージに登場したFacebookのシェリル・サンドバーグCOOは「force.comとの連携により、Facebookの持つ潜在性が大きく引き出される」と話す。force.comでアプリケーションを構築し、それをすぐにFacebookの中で利用できる。その仕組みをSNSの中で友達に紹介でき、これは開発者にとってもユーザーにとっても新しい試みだという。「想像もしていなかったアイデアがユーザーから生まれてくるだろう」(サンドバーグ氏)
もう1つのクラウド連携がAmazonだ。force.comにはApexという簡単な開発言語があるが、クラウドでも使い慣れたRubyやPHPを使いたければどうすればいいのか。その答えがForce.com for Amazon WebServicesだ。これを用いることで、force.comからAmazon Elastic Compute Cloud(EC2)やAmazon Simple Storage Service(S3)をシームレスに利用できる。
例えば、force.comのアプリケーションからデータの保存場所としてAmazon S3を指定したり、逆にAmazon EC2上でRubyやPerlを用い開発したアプリケーションとforce.comのアプリケーションを接続したりできるようになった。このほかにも、force.comのアプリケーションの中から課金の仕組みにAmazonpaymentsを利用できるなど、さまざまな連携が可能となる。
さらに、force.com上のネイティブなアプリケーションも、続々と増えていることが報告された。その1つとして、富士通が提供するERP製品、Fujitsu Gloviaも今回、force.comのNativeアプリケーションとなることが発表された(日本での提供、対応は未定)。
予定時間の90分を大幅に超過し、2時間あまり熱弁をふるい続けたベニオフ氏。「force.comはさらに拡大を続ける。それにより、企業は必要なすべてをクラウド環境でそろえられる」と締めくくった。
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