「プライベート」クラウドコンピューティングが人気上昇中:内輪ゆえの強固なセキュリティが強み(3/3 ページ)
「プライベート」クラウドコンピューティングは、ファイアウォールの内側に置かれた小規模なクラウド型ITシステムを通じてサービスを提供するものだ。メインストリームバージョンと異なるのは、内輪のネットワークで完結するという点だ。
クラウドストレージ用ソフトウェアは複雑
The 451 Groupのストレージアナリスト、ヘンリー・バルタザー氏は「こういったストレージクラウド用のソフトウェアを開発するのは難しい。この種のソフトウェアは2つの部分で構成される。最初の部分はフロントエンド、つまりアプリケーションだ。これはホストに面した部分で、ホストの管理やプロビジョニングを行う」と話す。
「バックエンドは基本的な部分である。これはシステムの拡張やストレージ容量の増大といったニーズに対処する。この部分では、ParaScale、Nirvanex、Cleversafeといった第2世代の新興クラウド企業が優れたノウハウを持っている」とバルタザー氏は語る。
最先端の科学研究プロジェクトのコンピューティングで高い拡張性と最高のスループット性能を求めるローレンスリバモア、サンディア、ロスアラモスといった国立研究所では一般に、ハイパフォーマンスの専用ストレージシステムが使われている。ある意味では、これらのシステムはカスタム設計のクラウドシステムに似ているが、「実際には巨大なマシンといった感じだ」(バルタザー氏)という。
しかし上述の新興クラウド企業は、特に高速なI/Oアクセスを必要としない非構造型データ用のインフラを提供している。高度なセキュリティは必要ではなく、安全にアクセスできる場所であれば十分だというような業務データであれば、入門用の小規模なクラウド、すなわち2〜5台のサーバで構成されるシステムでも間に合う。こういったシステムは1万〜1万5000ドル程度のコストで済む可能性もあり、これは多くの中堅企業の予算の枠内に十分収まる。
「ParaScaleのモデルは、あまり頻繁にコンテンツが必要とされないバックアップやアーカイビング用途向けで、安価に拡張できるデザインとなっている。保存されたデータの70%は二度とアクセスされることがないといわれている。こういったデータをストレージクラウドに入れればいいのだ」とバルタザー氏は語る。
最近改正された連邦民事訴訟規則への対応という点でも、プライベートクラウドは、業務データを保存するための現実的な手段である。同規則では、デジタルデータを保有している企業に対し、データが整理された状態で保管されており、少なくとも3年間は利用可能であることを、訴訟の際に裁判所に示すことが可能な系統的なプロセスを保持することを義務付けている。
では、プライベートクラウドの将来性はどうなのだろうか。
「見通しは明るい。このビジネスモデルが成功する余地は十分ある」とバルタザー氏は言う。
「特にコンシューマー分野には、動画や写真、オフィスドキュメントなどの膨大なコンテンツが存在し、毎日新たに作成されている。これらは、Exchange Server、SQL Server、Oracleのサーバなどには保存されていない。こういったコンテンツには高速なI/Oは必要とされない。アクセスさえできればいいのだ」(同氏)
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