mixiの「つながり」を社会に生かしたい――ナナロク世代の同志、笠原さんに会った:有馬あきこのはじめましてインターネット
10月末に業績予想を上方修正するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いのmixi笠原さん。お会いしてみると、ユーザーのこと、社会のことを篤実に考える青年社長なのでした――。
ご無沙汰しています。有馬あきこです。サイボウズ青野さんに続く「あの人に会いたい」というわけで、今をトキメク? ミクシィの笠原さんを訪ねました。
担当編集が、またしても「有馬さんの原稿は<自主規制>なので、マトモな方にお会いすればマトモな原稿になるかと……」と失礼な口上を述べ、お話はスタート。
笠原 随分お久しぶりですね。いつ以来でしたっけ?
有馬 最後に3次元でお会いしたのは1999年でしょうか。メールやmixi上ではタマにやり取りしていましたけど。
笠原 1999年ということは、「イー・マキュリー(注:ミクシィの前身の社名)」のロゴデザインをお願いした時かな。
有馬 そうですね。当時、笠原さんとした仕事が、オン・ザ・エッヂでの最後のアートディレクションの仕事でした。だからわたしにとって、笠原さんはすごく思いで深い人です(笑)
笠原 ミクシィに社名変更する時、会社の受付からロゴプレートを外したのですが、ちょっと感傷的になりましたよ。ほら、今でもデータを持っているんです。
有馬 わたし、このデータもう持っていない(わけではないけど、MOで保管していて、ドライブがないため読めない)のでください!
……というわけでいただきました↓。
有馬 知り合ったきっかけって、どのようなコトでしたっけ?
笠原 当時、もちろん現在もですが、Find Job!を運営していて、オン・ザ・エッヂさんはサービスを利用してくれていました。それがきっかけかな。
担当 お互いの印象どのようなものだった……?
有馬 1999年当時はまだ若かったので(笑)、ほとんど「年上」としか仕事をしたことがなかったんですね。笠原さんは12月生まれなので、学年は同じですがわたしより年下だった。それが強烈。働き始めた1995年から4年間、笠原さんに会うまで、同世代や年下なんていなかったんですもん。
笠原 僕は「あー、有名な人に会ったな」って思いました。
有馬 え?! 有名だったんですか?(担当、「コイツが?」という目でわたしを見る)
笠原 有馬さんもそうですが(笑)、1999年当時のWeb業界では、オン・ザ・エッヂという会社が既に有名でした。
有馬 それはまったく、知らなかったです。オン・ザ・エッヂは1社でインターネットのトータルソリューションを提供ということで、サーバ管理もプログラムもデザインも、全部社内で抱えていたんです。だから「一匹狼」的なところがあって、外の世界、外とのコミュニケーション、特にWeb系の同族ともいえる企業さんとの接点、取り引きが皆無に等しかったので……。
mixiがひとり勝ちする理由?
有馬 わたし、笠原さんから誘われてmixiを始めたんですけど、だからmixiIDが若いのちょっと自慢なんですけど(笑)、使ってすぐに「あ、SNSはmixiのひとり勝ちになるな」って思いましたよ。
笠原 それはなぜ?
有馬 当時、GoogleのOrkutとかGREEもやってたんですけど、それらに対してmixiは日本人のために開発されている印象があった。
笠原 具体的には?
有馬 UIがフレンドリー。そして、コミュニティー機能かな……。参加していれば、積極的に発言しなくても、新着の情報が入ってくる。万事控えめな日本人向きだと感じます。
「つながる」サービスを強化
笠原さんに、直近のトピックを聞いてみました。
笠原 大きくは2つあります。コアとなる、「つながる」「コミュニケーション」といった機能の強化です。つながりたい人とつながりやすくし、そこでコミュニケーションを広げられるようにする機能ですね。もう1つは、プラットフォーム展開で、外部パートナーとの連携ですね。
OpenID対応をはじめ「つながる」機能の強化はここ数カ月で結実している。
- mixiに「かんたん友人検索」 関係が近い人を上位に
- mixiに「あなたの友人かも?」機能 「おすすめマイミク」を正式化
- 「mixi年賀状」 住所知らないマイミクに郵送
- mixiがOpenID対応 「マイミク限定」を外部サイトでも
笠原 「mixiで久々に連絡をとれた!」とか「mixiを通じて結婚した!」といったことがあると、心から「やっててよかったな」と感じます。その部分は忘れたくない。
有馬 mixiはサイレントマイノリティに優しい印象がある。例えば、凄くマイナーなペットの育て方について情報交換するコミュニティーがあったり、血液型が「RH−」の人のコミュニティーがあったり。困っている人に優しい。
コミュニティーを現実社会の貢献に生かす
有馬 ところでmixiプレミアムのサービス内容は強化しないんですか? 実は、1つアイデアというか、お願いがあるのですが。
笠原 なんでしょう?
有馬 今、mixiプレミアムの料金は、月額315円ですよね? 例えばそれを月額420円にして「mixiプレミアム+α」というような新しい料金体系を作る。そして差額は、mixiが責任を持って、社会貢献につながるようなことに募金する。こうすることで、mixiで生まれた人のつながりが、より現実社会に貢献できるようになるのではと思うのですが。
笠原 なるほど。興味深いですね……。(しばらく考え込む様子だが、やがて顔を上げ)今準備している年賀状企画では植樹のような還元も考えています。コア部分の強化やプラットフォーム展開の目処が一通りついたら、企業としてどのような社会貢献をできるのか、考え実行していくつもりです。
実は取材の終了後、笠原さんから次のようにメールをいただきました。
1999年の時もそうですが、お会いした後はいつも、ああ言えば良かったかな、こういえば良かったかな、と考えてしまいます。
言葉を発する前にじっくり考え、誠実にお答えいただく笠原さんの、人柄がしのばれます。
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