金融危機とIT経営(2):伴大作の木漏れ日(3/3 ページ)
経済産業省は6月「IT経営協議会」という組織を立ち上げた。同省商務情報政策局情報処理調査官平井氏に今後の方針について聞いた。「ユーザーの二極化」についてのわたしの見解について、企業のIT投資規模が欧米の企業と比して小さいことなどの現状を説明してくれた。
金融危機が実態経営に及ぼす影響への対策
前回、金融危機に対応するための処方箋という話をしたが、IT部門ができることは限られていると考えがちだ。しかし、果たしてそうだろうか。さまざまな企業の再建プロセスを見てきたが、言うまでもなく売上高の増加とコスト削減が最も有効な手法だ。売上高の拡大に関しては現場サイドの貢献が最も重要だろうが、どの製品の将来性が高いか、その製品の売上高の増加を阻害している要因は何かという課題に関する情報を情報処理部門が握っているケースは多い。また、コスト低減でも、売上高が仮に10%程度低下した場合、どの部署でオーバヘッドコストが高いか、重複している業務がないかという情報はすべてシステム部に集まっているはずだ。
さらに、将来性のある部署はどこかという情報を経営者は求めている。それを握っているのは他ならぬ情報システム部門だ。部署ごとあるいは地域ごとに独立して設置されている情報システム部門を統合することにより、情報処理コストを大幅にカットできるかもしれない。従来のシステムを見直してコストの引き下げも可能かもしれない。
また、業界全体の環境悪化により、M&Aがいつ実施されるかも分からない。その時に素早く対応できれば、勝者として勝ち残れる可能性は高い。情報システム部門は、金融危機を勝ち抜くための「かなめ石」だという事を認識すべきだ。情報システム部門はIT経営のかなめ石でもあるのだ。
IT経営を支える三つの要素
最後に経産省商務情報政策局でIT経営協議会立ち上げに尽力された先の企画官村上氏(現メディアコンテンツ課長)の言葉を紹介してコラムの結びとする。
「最初のころは僕の道楽、仲良し倶楽部と揶揄(やゆ)された。しかし、次第にIT経営という概念が理解されるようになりました。本当はITは単なるシンボルで、ITに代表されるツールを経営者がどう使うのかという姿勢が問題なのです。その事が理解されてきたと思っています。これから、経営層にお会いになる時、必ず3つの言葉を言ってみてください。それに反応しない経営者やその人が率いる組織はやがて深刻な状況に陥る可能性が高いと思います。その3つとはグローバル、オープン、知識の資質です」
誠に経営とITとの関係の本質を言い当てた良い判断基準だ。
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