IM、チャットがビジネスコミュニケーションの中心に:電子メールはもう古い?
ビジネスワーカーのコミュニケーションツールが、電子メールからインスタントメッセージに変わりつつある。だがPBXなどと、どのように連携するか? という課題もある。解決の糸口はどこにあるのか――。
企業の変化が、コミュニケーションツールの変化を後押しする現状
「コスト削減やグリーンITへの対応に加え、金融不況へも対策せねばならないなど、企業を取り巻くビジネス環境が困難さを増していることは論を待たない」と日本アイ・ビー・エム 澤田千尋 Lotus事業部長が切り出したのは、同社主催の「ユニファイド・コミュニケーション フォーラム 2008」基調講演でのこと。解決の糸口を模索する企業に対しては、「ユニファイド・コミュニケーション+コラボレーション」(IBMによるキーワードは『UC2』)という切り口からソリューションを提供するという。
「ここ10年ほどにおいて、企業内で最も大きく変化したのは、その組織のあり方だ」と澤田氏は話す。従来は縦割り型の組織構造で業務を行えば済んでいたが、現在は組織の枠を超え、プロジェクト単位でユニットを組みビジネスを推進しなければ、変化の激しいビジネス環境で勝ち残れない。「このような状況下、新しいコミュニケーションツールが求められている」(澤田氏)
IBMでは2年に1度、企業のCEOに、自社が抱える課題について聞き取り調査を行っているという(「CEO Study」)。その最新結果によると、「社内外のコミュニケーションを高める必要がある」と認識している企業は約80%に達するという。一方「現状導入しているコミュニケーションツールに満足している」と回答した企業は55%ほどに過ぎず「このギャップを埋めなければならない」(澤田氏)
変化したのは企業組織だけではない。例えば女性社員が家庭で育児をしながら在宅勤務するといった、ワークライフバランスを重視した労働環境を取り入れたり、エコやコスト削減の観点から出張を減らし、可能な限り電話会議やWeb会議で済ませるなどといった最近の傾向も、新しいコミュニケーションツールの必要性を高めている。
Lotus Sametimeをコミュニケーションプラットフォームの中核に
澤田氏は興味深い調査結果を紹介する(本文右参照)。電子メールが一般化する前、コミュニケーションツールはそのほとんどが電話とFAXであった。それが2005年になると、約20%を電子メールが占める。しかし2010年の予測としては、電子メールの割合はそう変わらず、「そのほかのコミュニケーションツール」が30%もの割合を占めるという。
そのほかのコミュニケーションツールとは何か? 澤田氏はそれを「インスタントメッセージ」だと説く。澤田氏はすでにビジネスワーカー内でインスタントメッセージが浸透しつつあることを示す調査結果を紹介。また「Lotus Day 2008」東京会場でのアンケート結果として、半数以上の企業が、既にビジネスツールとしてインスタントメッセージを導入済み、あるいは導入検討段階だと回答したという。そして、新しいコミュニケーションツールとして企業から期待されるインスタントメッセージ分野に対し、IBMが提供するソリューションが、冒頭述べた「UC2」である。
従来、企業において、構内網(PBX)の上にのる固定電話や一部テレビ会議システムは、Web会議、社内ポータル、業務システム、そしてメールといったITシステムと連携できていなかった。その結果、固定/携帯電話のコストがかさんだり、うまく在籍確認できなかったり、あるいは個々人がフリーのチャットソフトを使用しセキュリティに不安を抱えたりといった課題があった。澤田氏は、UC2の中核製品として「Lotus Sametime」を据え、課題解決とともに企業におけるコミュニケーションプラットフォームの確立を図るとした。
IBMでは近い将来、Lotus Sametimeのポートフォリオに属する製品として「Lotus Sametime Unified Telephony」の発表を予定している。同製品により、マルチベンダー間のPBX、IP-PBX、携帯電話とインスタントメッセージ環境を統合できる。結果としてビジネスユーザーは、クライアントとして利用するPCやスマートフォンから、着信転送、通話転送、在籍(状況)確認、通話共有といった機能を自在に享受できるという。またLotus Sametime 8.02からは、Microsoft SharePoint Serverとの連携が図られる。
「競合の中には、PBXをすべてPCに置き換えるんだ、という戦略をとるソフトウェアベンダーもいる。しかしIBMは、PBXベンダーをパートナーと位置付け、協業体制の強化を図る。『餅は餅屋』ということだ」と澤田氏は話す。UC2という旗印のもと、ワークスタイル、そしてライフスタイルの変化に対応するコラボレーション環境強化に向けソリューション強化を図るという。
関連記事
- 2010年まで回復見込めず:景気後退の中でもSaaSエンタープライズアプリ市場は成長――Gartnerの見方
Gartnerによると、景気後退の中にあってもSaaSエンタープライズアプリケーションとクラウドコンピューティングの市場は今後も拡大する見込みだ。しかしSaaS市場は企業の支出抑制の影響を受け始めており、来年にはSaaSへの投資が減少する可能性もあるという。 - IBM、企業向けコラボレーション製品「Bluehouse」を発表
IBMは同社のクラウドコンピューティング戦略の一環として、SaaS製品の「Bluehouse」やWeb会議ツール「Lotus Sametime Unyte」を発表した。 - IBM、Lotus NotesのSaaS版を提供へ
IBMは、エンタープライズアプリケーションを現代的なWebサービスやWeb2.0の世界へ導くホストバージョンのLotus Notesを投入する計画だ。激しい市場競争の中では明確な差別化が不可欠だ。 - IBM、“MSフリー”なデスクトップPC提供へ
Canonical(Ubuntu)、Novell、Red Hatと協力して、LotusとLinuxを組み合わせたパッケージを推進する。 - マルチベンダーのユニファイドコミュニケーション:アバイア、複数ベンダーの「在席情報」を収集するUC新製品
日本アバイアは、IBMやMicrosoftのコラボレーションソフトやAOLなどのインスタントメッセンジャーソフトと連携するユニファイドコミュニケーションの新製品を発表した。 - XSSや任意のコード実行の恐れ:IBMのLotus DominoとSametimeに深刻な脆弱性、パッチを公開
Lotus Domino Webサーバの脆弱性は、クロスサイトスクリプティング攻撃や任意のコード実行に利用される可能性がある。 - Lotus、Oracle、Salesforceと連携:米国にスマートフォン業務アプリの嵐が到来
米フロリダ州オーランドで開催中のBlackBerryのカンファレンスには電子メールやグループウェア以外のソリューションを実現する多彩なアプリケーションが出展された。 - IBMのLotusやCognosにBlackBerryからアクセス可能に
IBMとRIMが共同で、「Lotus」のメールやIMのほか、BIソフト「Cognos」をBlackBerry対応にする。 - Wireless Enterprise Symposium 2008 Report:RIM、BlackBerryハイエンドモデルを日本投入か
RIMが発表したBlackBerryのハイエンドモデル「Bold」がNTTドコモから発売される見通しだという。 - 米IBM、Lotus部門立役者を北欧責任者に
Lotusの躍進が著しい。「IBMでは、10億ドルを投じて推進してきたUCC戦略が実を結び始めたのだと考えられる」とeWEEK。その背景には何があるのだろう?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.