2009年も加速するクラウドデータベース:AmazonやMSの事例公開が鍵
クラウドコンピューティング戦線では、2009年もデータベースベンダー各社の大きな動きが続くとアナリストは予測する。Amazon.comやMicrosoftの照会サービスの利用事例が広く公開されるようになれば、クラウドはデータベースベンダーのメジャーな関心事になるという。
MicrosoftやOracleなどのデータベースベンダーは2008年、クラウドを長期的な視点で考え始めた。ベンダーは2009年、さらに多くのデータベース機能をクラウドに提供するだろうとアナリストは予測する。
データベース市場を観察している人々にとって、2008年はクラウドコンピューティングがデータベース市場に本格的に接触した年として記憶に残るだろう。
その最大の例は、今年3月のMicrosoft SDS (SQL Data Services) の発表だろう。これにより、Microsoftはクラウドバージョンのデータベースを提供した最初のメジャーなデータベースベンダーとなった。しかし今年は、BlistやLongJumpといった小さな会社もWebベースのデータベースで市場を賑わせている。
クラウドコンピューティング戦線は、2009年もデータベースベンダー各社の大きな動きが続くだろう、と業界アナリストは予測する。
とはいえ、企業などが従来のDBMSを完全に破棄すると考える理由はない。例えばMicrosoftは、SDSがSQL Serverの機能をすべて提供するわけではない、と即座に説明している。SDSはAmazon.comのAmazon SimpleDBと比較しても遜色はないが、むしろWeb上で提供するスケーラブルなオンデマンドのデータストレージおよび照会処理サービスと位置づけられている。
それでもMicrosoftは将来的にSDSの機能を拡張し、集計、分散照会、スキーマ、その他の機能を追加する可能性を否定していない。Gartnerのアナリスト、ドナルド・ファインバーグ氏は、SDSも最初の動きとしては一定の評価を与えることができるとするが、一般企業より開発者に利用されるケースが多いという事実は、高性能DBMSに含まれる主要な機能が欠落しているからだと指摘する。ただ、来年になればフル機能のDBMSがクラウドにも数多く登場するだろう、と同氏は予測する。
「すでにOracleライセンスはクラウドで利用可能だ。VerticaやEnterpriseDB Postgres PlusはEC2で提供されている。市場戦略上、IBMも沈黙しているわけにはいかないだろう」と同氏。
自社のデータベース製品とミドルウェアツールをAmazon EC2 (Elastic Compute Cloud) 上で利用できるようにしたOracleの決断は、クラウドベースのホスティングを顧客の代替オプションにする可能性を秘め、MicrosoftのWindows Azureに匹敵するクラウド戦略を同社にもたらした。
一方、今年10月に発表されたWindows Azureは、Azure Services Platformの基盤となるクラウドサービスオペレーティングシステムだ。
「MicrosoftのSDSはスタンドアローンのサービスとしてより、Azureのコンテキストの中でこそ大きな意味を持つ。だが、Microsoftのシンプルな照会サービスか、それともAmazonのSimpleDBか、企業における導入状況の詳細については、いましばらく注視する必要がある」と語るのは、The 451 Groupのアナリスト、マット・アスレット氏だ。
アスレット氏は、Amazon.comやMicrosoftのシンプルな照会サービスの利用事例が広く公開されるようになれば、2009年もクラウドはデータベースベンダーのメジャーな関心事になると予測する。そうした状況の中、「伝統的なデータベースベンダー各社は、クラウドプラットフォーム上で自社製品を管理、構成できる機能の開発に注力するだろう」と同氏は語る。
「2008年はAWS (Amazon Web Services) やその他のプラットフォーム上で自社製品を利用可能にすることが課題だった。2009年はパートナーシップと、クラウドの利便性を取り込んだ構成、管理、ライセンシングツールの提供が大きな課題になるだろう」とアスレット氏は予測する。
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