システムへの飽くなき愛着が成長の原動力:「2009 逆風に立ち向かう企業」セブンアンドワイ(2/2 ページ)
インターネットで書籍やCDを販売するセブンアンドワイは、ビジネスの領域をテレビなどに広げ、堅調な成長を遂げている。「仕事もシステムも汗をかいてこそいい成果が生み出せる」と語る鈴木康弘社長に話を聞いた。
ITmedia 鈴木社長はシステムエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。情報システムへのこだわりは強いと聞いています。
鈴木 かつてシステムエンジニアとして働いていた時に感じた一種のむなしさを今でも覚えています。プロジェクト単位でシステムを開発していく中で、最初は次々と新しいシステムを開発できることが嬉しかったのですが、徐々に開発を途中で手放すことに疑問を覚えるようになりました。「こういう風に作ればよかった」と感じる機会が増え、個々のシステムに愛着を感じ、システムをわが子のように考えるようになっていたのです。
昨今の企業内システムはとても複雑です。それに輪を掛けるように、企業は「ソリューション」と名の付く複雑なサービスをいろいろ打ち出した結果、システムの構築や運用も煩雑になりました。コンピュータを単純に考えると、ハードウェアの上にソフトウェアを乗せて動いているものにすぎません。システムももっと単純に考えればいいのにと思います。景気後退でIT投資の削減が余儀なくされる中、今後は複雑化したシステムの見直しを図る企業が増えてくるでしょう。
ITmedia セブンアンドワイとして、今後はどのようなビジネスに注力しますか。
鈴木 インターネットの良さは「ボーダーレス」「タイムレス」「インタラクティブ」という特徴にあります。セブンアンドワイが実現できていないのはインタラクティブの部分です。ここの答えを出すために、グループ企業、パートナー企業とともに新たな流通ビジネスを作っていきたいと考えています。
口コミサイトなどの基本的なビジネスモデルは広告ですが、インターネットを介した小売業にはまだ確固たる収益モデルがありません。インターネットで小売業をどのように営むかを模索し、自分たちの業務にどう生かすかという答えを見つけるのが今後2、3年の課題ととらえています。
引き続き、システム開発にも力を入れます。システムは人間ができることを24時間365日やってくれるものに過ぎません。システムが万能だから業務が滞りなく進むと考えるのは大きな間違いです。
よく自社システムが何点かと聞かれます。わたしの評価は20点です。それはシステムを作る社員が20点と言い換えられるかもしれません。システムの根幹を担う人材の育成も大切な仕事です。システムは自分たちで汗をかいてこそいいものが作れます。デジタルな時代だからこそ、人材育成というアナログな部分も大切にしたいですね。
ITmedia 鈴木社長が個人的に立てている2009年の目標を教えてください。
仕事でもプライベートでも「作る」ことにこだわってみたいと考えています。工作が好きなので、お城でも作ってみましょうか(笑)。植物を育てたり、職人やデザイン関連の話を聞いたりするのもいいかもしれません。
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