不景気に強いSOA戦略の構築方法:赤ちゃんを風呂の湯と一緒に捨てないために(2/2 ページ)
主要なコストセンターとみられることの多いITは不況になると上級管理職が真っ先に予算削減に手を付ける分野の1つだ。しかし、SOAはうまくするとその限りではないようだ。
ステップ3:まずは自らを救い、そしてビジネスケースを構築する
経済危機に直面したIT部門は、まるで気圧が下がった飛行機の客室に座っているようなものだ。隣席の人を助ける前に、まず自分自身が酸素マスクを口にしなければならない。同様に、IT部門は会社の目標達成を支援する前に、まずは自分自身が生き延びることを考えなければならない。そのための最良の方法は、優先度の高いプロジェクトのビジネスケースを構築し、それらがいかに収益に影響を与えるかを定量的に説明することだ。
SOA関連プロジェクトにとってグッドニュースは、SOAがしばしばスタンドアローンベースで妥当性を判断されることだ。すなわち、IT部門はROI(投資回収率)をIT関連のコスト削減という視点からのみ考えればよく、具体的には以下のような利益がある。
A:コード再利用によるアプリケーション開発コストの低減。アナリストによると、長期的に見たコスト削減の水準は、アプリケーション開発コスト全体の最大20%になるという。
B:統合化と保守コストの低減。ある調査によると、完璧なSOAアーキテクチャやツール群は、統合化コストを30%以上削減し、かつ統合化の保守費用も最大75%削減するという。
C:レガシー資産の退役あるいは近代化。SOAアプローチへの移行により、IT部門はレガシーサービスや、その保守コストを削減できる。例えば、募金活動を行うThe Leukemia & Lymphoma Societyは最近、レガシーホストアプリケーションプロバイダに代えて、SOAプラットフォームを構築した。それによって年間数百万ドルの取引手数料をセーブできた。
ステップ4:最小のコストで最大の成果を得るための方法を探る
SOAのビジネスケースを構築するにあたっては、“戦略的”SOAイニシアティブに積極的に取り組み、最終的に失敗した多くの組織から学ぶことが重要となる。インフラストラクチャの変更、長期のサービス契約、“年度を越えるROIの保証”をともなうベンダー主導型の“ビッグバン(大改革)”アプローチは、あらゆるコストを払っても避けなければならない。むしろ初期投資の負担が少なく、インクリメンタルインベストメントが可能で、規模拡大の前にROIを証明できるようなツールとアプローチにフォーカスすべきである。インフラストラクチャはすべて既存のIT資産、すなわちアプリケーションや既存のSOAインフラストラクチャ(エンタープライズサービスバス、統合化ブローカおよびガバナンスツールなど)に適合しなければならない。
また、プランニング段階でタイミングとともにすべての資本コスト、運用コストなどを計算に入れた包括的な総保有コスト(TCO)分析を行うこと。以下の3点を含め、いくつか検討すべきことがある。
A:ソフトウェアのコストとタイミング。例えば、一括払いか、SaaSのような賦課方式か、あるいはオープンソースサブスクリプションか。
B:アーキテクチャと実装化。例えば、リプレースか、既存資産を活用できるインフラストラクチャか。
C:リソースアロケーション。プロフェッショナルにサポートされたツール(商用サポートのあるオープンソースプラットフォームなど)を選び、限られた内部資源をコモディティアクティビティ(トラブルシューティングなど)ではなく、ハイバリューアクティビティ(ビジネス要求への対応など)に集中する。
ステップ5:ガバナンスとメジャーメント
SOAが実装化で終わらないことは今日、広く理解されている。実際、SOAでは現行のガバナンスとメジャーメントのために、組織的なプロセスとツールのセットアップが不可欠である。今日のような厳しい予算環境では、ターゲットを絞り込んだプラグマティックなSOAガバナンスへのアプローチが現実的だ。ビジネスケースを動かす主要なテコ(コード再利用による節約? 保守コストの削減?)を見極め、それらを監視するための測定基準を策定する。プロセスとツール(SOAガバナンスレジストリやレポジトリなど)を実装するとともに、厳格にパフォーマンスを計測し、ベストプラクティスを確立する。
一般に、これら5つのステップは不景気の場合と同様、好景気におけるITにも適用できる。しかし、景気後退局面にあるときは、こうした原則に従うことで、SOAのような重要なITイニシアティブで“赤ちゃんを風呂の湯と一緒に”捨てるといった失敗を回避できる。最後に、これらの原則は常に不変であっても、緊縮予算の下では、プランニングサイクルの短縮化やインクリメンタルインベストメント、測定基準の厳格な適用など、必然的に高度にプラグマティックなアプローチが要求されることを忘れてはならない。
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