戦略モデルを導入するなら「毎年5度ずつ」舵を切れ:闘うマネジャー(2/2 ページ)
一定の成果を上げた戦略モデルをまねる場合でも、個別の事情から断念してしまうことがある。ここを突破するには、あせらず、問題の本質をしっかりと見据えなくてはならない。
部門長の人事だけがブレーキなのか
さて、ディフェンシブからオフェンシブ(攻撃的)に切り替えなくてはならないのだが、筆者としては「皆、急ぎすぎではないか。ゆっくりとやればいいではないか」と思う。
組織が180度ひっくり返って、直ちにオフェンシブになるわけがない。毎年5度ずつ舵を切ればいいくらいで進めてはどうだろう。正しいからと急げばどこかに無理が発生し、システム障害などにつながる。組織は「それ見たことか」と、ますますディフェンシブになる。
この話をすると、「わたしどもの自治体では3年で異動が行われるので、時間を掛けろと言われても無理です」と返ってくるが、本音がどこにあるか改めて自身に問い直して欲しい。本音は改革を担い責任を負うべき部門長が、2〜3年で必ず変わってしまうから「時間を掛けろと言われても無理」なのではないか。しかも、議会のことにかまけているばかりで、組織の課題に向き合おうとせず、無事に通過することばかり考えているから「無理」と言っているのではないか。
筆者は「ながさきITモデル」を、たった1つの情報政策課に導入するのに3年を掛け、定着させるのにさらに2年を掛けた。ダウンサイジングには8年も掛けている。ゆっくりと進めているので、無理がない。失敗があってもリカバリーができる。だから、職員がいつの間にかオフェンシブになった。
かつて、長崎県庁は、とある大手ベンダーの上得意といわれる自治体であった。ところが今、職員は、誠実な地場中小零細企業を使うのに何の抵抗も覚えない。むしろ積極的なくらいだ。
ゆっくりとやればいいではないか。急ぐと「それ見たことか」と言われるだけだ。
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