クラウドコンピューティングの幻想から目覚めよ:単純ではない企業ITの実情(4/4 ページ)
クラウドコンピューティングがあたかも時代の救世主であるように論じられている。過熱ぶりを見ながら、真っ先にわたしが思い出したのはNGNだ。3月19日に著書『クラウドコンピューティングの幻想』(技術評論社)を発売するエリック松永氏に話してもらう。
クラウドコンピューティグをどう考えればいいのか
企業向けクラウドコンピューティングに絞って考えてみると、クラウドコンピューティングを考えるということは、どうやって企業とITを分離させるかという議論にほかならない。つまり、クラウドコンピューティングの仕組みがどうということを今の時点で研究しても意味がない。まずは企業の事業にとってITが差別化要因になっているのかを議論し、戦略の実行をさらに速められるようなITを真剣に考えるべきだろう。
例えば、新興国でのビジネス展開が注目されているが、自社のITを持つことによって進出が阻害されていないか、アウトソーシングやクラウドコンピューティングのサービスを活用することでより迅速に新興国への進出が可能になるのかといった議論が必要なのだ。
企業システムにおいては、真っ先にクラウドコンピューティングという言葉がでてきたら、それはおかしいと思うべきなのだ。ITと企業の戦略レベルで考え直すこと、それが今やらなければいかねいことなのだ。
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著者プロフィール:エリック 松永
19世紀米国の二大発明家グラハム・ベルに起源を持つ米通信会社AT&Tにて、ネットワークコンサルティングの領域を担当。アクセンチュアで「ネットワーク」を柱にコンサルティングを展開する。独自の切り口はクライアントから高い評価を得る。現在、日系大手シンクタンクにて通信事業者に対する戦略コンサル、及び新規事業開発に携る。
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