うわさはあくまでうわさにすぎないが、それでも「米IBMが65億ドルの現金でSun Microsystemsを買収する交渉を進めている」との未確認情報が3月18日にメディアで報じられてからというもの、インターネットにはさまざまな憶測が飛び交っている。IBMによるSun買収の結果については、「ソフトウェアモノリス」「巨大エンタープライズ」「ハイテクコングロマリット」といったフレーズを用いて語られている。
だが「違法」というキーワードに注目が集まり始めたのは、業界団体Computer & Communications Industry Association(CCIA)の会長兼CEOを務めるエド・ブラック氏がこのIBMとSunの取引の可能性をめぐるさまざまな憶測に加わってからのことだ。
「もしこの合併計画が実際に発表されれば、独禁法当局による慎重かつ徹底的な調査が必要となるだろう。両社が現在手掛けているIT製品は非常に広範囲に及んでいるからだ」とブラック氏は声明で語っている。「IBMとSunは何年も前から激烈な競争を繰り広げてきた。その両社が合併することになれば、主要な競合相手がいなくなることになる。そうなれば、いずれ多くのIT製品の選択肢と価格に影響が及ぶことになるだろう」と同氏。
また同氏は「IBMとSunが合併すれば、エンタープライズサーバ市場に関連して、独禁法に抵触する可能性が問われることになるだろう」とも主張している。この市場では、両社ともUNIX OS搭載サーバでかなりの市場シェアを誇っているからだ。さらに同氏は、この買収が実現すれば、ストレージ、ミドルウェア、Java、データベースの分野にも何かしらの影響が及ぶことになるだろうと語っている。
「昨今の経済情勢において、われわれに必要なのは革新だ。革新を促すのは競争的な市場だ。われわれにとって非常に重要となるデジタルインフラの中心に、“あまりに規模が大き過ぎてつぶせない企業”など必要ない。そうした合併が競争に及ぼす影響やIT製品の価格に及ぼす影響は非常に広範囲に及ぶものであり、独禁法当局による綿密な調査に値するものだ」と同氏。
巨大企業のIBMにとって、そうした調査は既にお馴染みの領域だろう。同社は長年、独禁法当局のターゲットとなっており、米国内外を問わずライバル各社から常に警戒されている。1969年にはIBMは「ビジネスコンピューティング市場を独占しようとしている」として、米司法省から独禁法違反訴訟を起こされている。この訴訟は結局、1983年に和解で決着した。
そしてIBMは現在もメインフレームビジネスをめぐり、欧州で独禁法調査を受けている。IBMは昨年には、メインフレーム技術を手掛けるPlatform Solutions(PSI)との関係をめぐる数件の独禁法訴訟を終結させるべく、同社を買収している。また今年1月には、メインフレーム市場の残りの競争相手の1社であるT3 TechnologiesがIBMに対する独禁法違反の申し立てを欧州委員会に提出したため、IBMは現在、欧州連合からも独禁法調査を受けている。
「この合併には多くのIT企業やそのほかのさまざまな向きが注目している。この合併の影響で、コンピュータサービスの選択肢が狭められる結果につながりかねないからだ。われわれは、IT製品を利用するすべての向き、そして競争的かつ革新的なビジネス環境やそうした環境が経済で果たす役割を重視する向きによって、今後、この買収交渉の成り行きが注意深く監視されていくものと期待している」とブラック氏は語っている。
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IBMは65億ドルの現金でSunを買収する可能性が高いとWall Street Journalが報じている。(ロイター)
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