遠ざかるスパコン世界一の座:伴大作の木漏れ日(3/4 ページ)
NECと理化学研究所次世代スーパーコンピュータ開発本部は、次世代スーパーコンピュータの共同開発体制について発表した。日本が次世代スパコンで世界一に返り咲くことは難しそうである。
科学技術行政の投資の問題点
日本の科学技術行政、中でもコンピュータに関する支出判断には違和感が残る。次世代のスパコン、それも、世界一の性能を目指すのであれば、金に糸目をつけないぐらいの覚悟は必要だ。
NECがこれまで蓄積したベクター型スパコンのノウハウを結集した最先端のシステムを国費で構築するのなら、あるいは既に世界の主流となったスカラー型で世界一を目指すのなら、それはそれで納得できる。どちらかを選択することが重要なのだ。
問題は、両者の長所を引き出して融合させようという狙いからか、ある意味で水と油の関係にある両者で合同のプロジェクトを組ませようとしたことにある。それほど潤沢とはいえない予算で、このような試みを行うなど暴挙に近い。公共建築を建てるときに業者を集めて談合する感覚なのかもしれないが、ノウハウの結晶であるスパコンでは、どの会社も技術情報の流出を極端に嫌う。共同プロジェクトなど不可能に近いのだ。
それにしてもなぜ、理化学研究所のプロジェクトは2つのアーキテクチャのどちらかを選択するのではなく、両者の長所を取り入れようとしたのだろう。同研究所の意欲は買うが、結局「二兎を追うものは一兎をも得ず」という結果は見えていた。
日本の科学技術行政ではこのようなケースがかなり多く見受けられる。関係者の意向を尊重するあまり結論を出さず、三方一両損のような進め方をする場合が結構多い。今回の件では、スカラー、ベクターいずれかを選択すべきではなかったのだろうか。
そのほかのビッグサイエンスプロジェクトでも多発する問題だが、建前は立派だが、肝心のプロジェクトそのものへの投資金額が足りないという話をよく聞く。(中身の設備資金にお金がないので前の研究所の古い設備をそのまま引越したとか、大規模な施設なのに新しい設備導入費用の予算しか見なかった結果、周辺の測定器やデータ処理、解析用のコンピュータ設備への投資資金がほとんど無かったというような話)今回も同じような話だ。全く違うプロジェクトとして、それぞれ潤沢な資金を充てるべきではなかったのだろうか。
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