遠ざかるスパコン世界一の座:伴大作の木漏れ日(4/4 ページ)
NECと理化学研究所次世代スーパーコンピュータ開発本部は、次世代スーパーコンピュータの共同開発体制について発表した。日本が次世代スパコンで世界一に返り咲くことは難しそうである。
米国におけるHPCの投資
地球シミュレータで日本に敗れたと米国が知った時期に、米国政府はロシア政府との間で核実験停止を決定。1996年「包括的核実験停止条約」が発効した。これにより、実験により核兵器の性能評価が出来なくなった。
米国政府はコンピュータのシミュレーションにより、評価を可能とするプロジェクト(Accelerated Strategic Computing Initiative、通称ASCI)を開始した。また、米国科学財団(略称NSF)は2000年からITR(Infomation Technology Research)を開始した。
両者のプロジェクトは前者がDoE、後者がNSFと異なった財源ではあるが、ともにIT産業に活力を与えた。特にDoEの予算は国防総省傘下の国立研究所のスパコン再構築に有効に使用された。(防衛関連なので具体的な金額は不明だが、どのスパコンも10億ドル以上、総額で50億ドル以上とうわさされている。)
このように米国はスパコンに対し、非常に短期間だが効果的な投資を行った。もちろん、開発ベンダーの選定や仕様の決定に関しては、日本よりもっと短期間に迅速な決定を行う仕組みも準備されていた。
新たな仕組み
今回のNECの理研のプロジェクトからの撤退で、日本が次世代スパコンで世界一に返り咲く目論見が遠ざかるのは間違いないだろう。また、理化学研究所が開発の目標に掲げていた1ペタFLOPSは既に米国で達成されているため、新たなゴール(恐らく30ペタFLOPS、編注:公式発表は10ペタFLOPS)を設定するに違いない。またそうでなければ、日本の科学技術力再生はあり得ない。
今回のNEC撤退を教訓に、「挙国一致、日本のベンダーが総力を挙げて新しいモノづくりを行う」などという馬鹿げた妄想から一日も早く抜け出してほしい。
真に日本政府に求められているのは、大胆な技術開発が実現できる環境を整備することだ。中でも、開発のための潤沢な資金、優秀な人材の確保、採算ベースに適うベンダーの協力が実現することである。
現在のような役人の学者だけで構成されるプロジェクトの運営では効率的な運営は困難だ。実際に海外との開発競争にさらされているベンダーがシステムの詳細まで決定に関与できるような新たな仕組みを一日でも早く作ってもらいたい。
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