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「かかりつけ薬局」のパフォーマンスを最大化せよ調剤薬局チェーンのBI活用(2/2 ページ)

大手調剤薬局チェーンの日本調剤は、分析ツールを広範囲に活用したダッシュボードを作成し、店舗の活性化を図る施策を打ち出している。

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1つのインタフェースで分析する


「活用する側にとって自由度の高いツールは、新しい分析の切り口を見つけやすくする」と語る志村次長

 「JP分析ダッシュボード」は2007年中に薬剤本部とシステム部向けに公開され、2008年に支店長向けと経理部向けが公開されている。各店舗の状況がより簡単に把握できるようになった。日本調剤では医薬品の販売状況を分析するためにコグノスなどのBIツールも導入しているが、Dr.Sum EA との使い分けについては、より多くの社員が日常のデータ活用、情報共有といった場面で利用できるツールとしての活用だという。

 Dr.Sum EAはサーバライセンスのため、利用者が増えることについてはコスト面で神経質になる必要はない。志村次長は「データ管理も楽ですし、開発も容易という点が魅力ですね。自由度の高い分析環境を作ることができるので、これならデータさえ用意できれば、社内でどんどん新しい切り口の分析ができるようになるはずだと期待しています」と語る。

 また河野部長は「このダッシュボードには、『調剤』『OTC』『施設・病院』などのタブがあります。OTCというのは処方箋不要の一般薬のことで、調剤薬局でも販売しています。こうした項目別にタブが設定されていて、タブを叩くと項目ごとに分析していくことが可能です。調剤のタブでは各店舗の成績、薬剤師のパフォーマンスをドリルダウンで見ていくことができます。それぞれの項目ごとにExcelシートを作成していたときは、数値がずれていたことがあり、一覧性もなかったのですが、いまでは1つのインタフェースで確認することができます」とデータ活用の進化を強調する。

分析ダッシュボードの存在感高める


システム構成の概要(資料提供:ウイングアークテクノロジーズ)

 ダッシュボードでの利便性が高まるにつれて、ユーザーからはこれまでにないデータを利用して分析した結果を見せて欲しいという声も上がっているという。志村氏はこうした要望に対してもダッシュボードサイドで閲覧できることを最優先しているという。「いままでのシステム資産と並行してダッシュボードの展開作業もやっているので、こうした要望に応えることは本来楽な作業ではないのです。ダッシュボードに取り込めないデータもケアしながら作業する必要がありますから」

 同社には旧来のデータベースに蓄積したデータがあり、これをダッシュボードに取り込むには手間がかかる。こうしたデータと連携させることは不可能ではないが、自動化するにはどうしても時間がかかる。しかし待ってくれとは言わないのが方針となっているらしい。「そうした要望が出たときに1年待ってくれ、ということになったら、ダッシュボードのファンが減っていきます。今は、とにかくダッシュボードが役立つ、ということを社員に感じてもらいたい。どのレポートをどれぐらいの人が見ているかというログは管理しているので、ボタンの位置など細かい変更を繰り返して改善をはかっています」と志村氏は語る。また、システムの開発・改変に関しても工数を削減し自社で運用しやすいというDr.Sum EAのメリットを生かしていきたいとも志村氏は話した。

 志村氏によると、今後の展開としては、各店舗向けにダッシュボードを公開していくことがまず優先される課題だという。また、将来的には、各担当者がダッシュボード上で独自の分析項目を加えながらオリジナルな分析ができるようにしていきたいという。各システムからのデータの取り込みはアウトソースしていて、それは今後も変わらないが、それ以降の分析プロセスは自由に行える仕組みにしていきたいということだ。

 「テーブルは用意しておいて、各社員がそれを利用してシミュレートできるレポート作成画面ができればいいですね。いまは定型画面を見てもらっている段階ですが、その面では、『旬な数字』にも敏感にならないといけない。いつも同じ数字がグラフ化されているだけでは飽きられてしまいますから」と志村氏は語る。現在の旬な数字は「面対応比率」や「ジェネリック比率」だという。面対応比率とは、ある店舗がどれだけ広範囲の病院の処方箋を受け付けているかという数字だ。通常、店舗の大半は「門前薬局」といって多くの処方箋を処理する主病院があるわけだが、それ以外の病院の患者をどれだけ呼び込んでいるかが問われるわけだ。ジェネリック比率は処方する薬でどれだけジェネリック医薬品を扱っているかということ。こうしたことは、各薬剤師のスキルを問うことにつながっていく。

 現在、日本調剤の店舗数は263店舗(2009年1月現在)。今後も月に3店から4店のペースで増えているというから、間もなく300店舗に達することになる。調剤薬局チェーンではビルなどにクリニックを誘致して市場開拓なども積極的に行っている。こうしたことを考えれば、ダッシュボードもただ定型のデータを分かりやすく見せるだけでは済まされない。課題をクリアするためにはどうすればいいのか、そうしたことを集中して思考するためのツールとなる必要がある。

 Dr.Sum EAを中心にすえた日本調剤の「JP分析ダッシュボード」では、すでに本部向けに予実管理のレポートも作成できるようになっているというが、これに加えて人事システムとの連携も勘案されているという。個人のパフォーマンス記録と人事データが連携することで、現場で働く人たちのモチベーションをこれまで以上に向上させることが狙いのようだ。そうした意味でも、同社の一連の試みはBIツールの現場活用を実践する活動だといえるだろう。

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