ネットブック市場に黒船来航、バッテリー寿命は最大5倍に
従来のネットブックの性能を大きく上回るデバイスが「COMPUTEX 2009」で数多く展示されている。その中心にいる「NVIDIA Tegra」は、ネットブックの勢力図を大きく塗り替える可能性を秘めている。
「最新のネットブックと比べて最大5倍のバッテリー寿命。1度の充電で、最大10時間の1080pのHDビデオ再生、25日間連続での音楽再生、毎秒46フレームでのビデオゲームの再生」――従来のネットブックとは一線を画すプラットフォームとしての実力を備えたデバイスがまもなく市場に投入されることになる。
NVIDIAと同社の業界パートナーは台湾で開催中の「COMPUTEX TAIPEI 2009」で、同社が提供するARMベースのGPU統合型プロセッサ「NVIDIA Tegra」を採用したモバイルインターネットデバイス(MID)を複数発表した。NVIDIAによると、現在、Tegraを採用した20以上の開発プロジェクトが進行中で、COMPUTEX 2009では、Compal CommunicationsやInventec Applications、Mobinnova、Pegatron、WistronなどがTegraベースのネットブックもしくはタブレットPCを展示している。これらは2009年後半には市場に投入されるとみられる。
NVIDIAのチーフサイエンティスト兼NVIDIA Research副社長を務めるビル・ダリー氏は先日のインタビューで、NVIDIA Tegraについて、「レイテンシに最適化したCPUという観点で考えると、x86よりARMの方が効率がよいアーキテクチャであると考えている。x86環境が必須ではなければ、有効な選択肢だろう」と述べていた。COMPUTEX 2009ではIntelが「Core 2 Duo」と「Atom」の中間に位置づけられる「Pentium SU 2700」を、AMDがデュアルコア版のAthlon Neoをそれぞれ発表しているが、x86対応システムとの高い互換性が重要な因子の1つだと思われていたネットブック市場のルールが変わりつつあることを感じさせる。またNVIDIAはAdobeと協業し、ARMプラットフォームにおけるFlashの最適化なども進めている。OS層でも、Windows CEに限らず、LinuxやAndroidといったプラットフォームの採用がいっそう進むだろう。
現在市場ではAtomベースのネットブックが好調な売れ行きを示しているが、Tegraベースのネットブックの価格は200ドルを下回る価格で提供されるとみられる。また、通信キャリアの複数年契約と組み合わせた場合は、さらに安価に提供されることになるだろう。半導体の出荷が大きく落ち込む中、性能と価格の両面で考えると、2009年後半は、海外ベンダーが製造するTegraベースのネットブックが市場を席巻すると予想される。
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