現場のコンサルタントが語る――J-SOX 2年目の知恵:わが社のコスト削減(2/2 ページ)
日本の上場企業の大半が2009年3月に向けて対応に追われたのが、いわゆる「J-SOX」だ。コンサルタントから見ても企業の対応の仕方はさまざまだった。2年目をどう迎えるべきなのか。プロティビティジャパンの嶋田英樹氏に語ってもらう。
リスク
そもそもJ-SOXでは「トップダウン型のリスク重視のアプローチ」がうたわれており、重要なリスクにフォーカスをあててその統制状況を評価するはずであった。ところが、ふたを開けてみると、手に入る一般的雛形に記載されていた標準的なリスクを何も考えずにそのまま採用して文書化し、評価をしてしまった会社が多かったのである。
B社でも、当初の文書を一般的なひな形から作成したために(このアプローチ自体は間違いではない)、そこに最初から記載のあった一般的なリスクについては全てそのまま残して作業を進めた。1年目の作業途中で受注情報の正確性に関するコントロールに不備 が見つかったが、不備があることによって顕在化するリスクが財務諸表に与える影響は重要ではないとの判断に至り、会計監査人からも了解が得られた。
つまり、もともとのリスク自体は、B社の実情を勘案すれば重要ではなかったのであるが、作業スケジュールに追われて本質的な判断ができていなかったのである。B社は評価作業を一旦止めてリスクの見直し作業を行ったが、結果としては全体工数の削減に成功し最終的には当初スケジュールで評価活動を終えている。
コントロール
現場主導で文書化・コントロールの認識を行ったC社は、結果として未出荷商品が売り上げにあがるリスクに対して現場の承認などの多くのコントロールがひも付けされているなどの状況が1年目プロジェクトの途中で分かり、急遽見直し作業を行った。見直しの際には例えば月末の売上リストと出荷データの突合せといったコントロールでリスクを十分に低減していると判断できれば、そのリスクにひも付けられていた他のコントロールは極力テスト対象から外す方向で整理をした。
特に次のような取り組みが有効だった。リスクの低減のために最も有効・効果的であるシステムのコントロールを認識し、マニュアルコントロールよりも優先して評価対象とすること。後工程で実施する効果的なモニタリングコントロールを認識(あるいは新規導入)して、前工程での業務コントロールを評価対象としないことだ。
コントロールの整理作業は、通常スプレッドシートでばらばらに展開されている文書ではなかなか効率的に整理・見直しが出来ない。従って、これらの見直し作業にはデータベース化された管理ツールを導入することが効果的であるが、ツールの効用については後述することにする。
プロセスの統合、リスクの絞り込み、コントロールの整理を通じて作業の無駄をなくすことは、毎年行わなければならないJ-SOX評価活動の効率化・コスト削減に最も効果的な手段の1つである。その結果は、内部的な人件費や外部リソースに掛ける費用削減に直結する。ただし、あくまでも内部統制評価制度の主旨を曲げてまで効率化に走る必要はとなく、評価としての妥当性と評価作業の効率性の折り合いをうまくつけることが重要である 。
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