エリソンCEO、IBMに宣戦布告:Oracle Open World 2009 Report
「Oracle Open World 2009 San Francisco」が10月11日、米国サンフランシスコで開幕した。ラリー・エリソンCEOはSunのハードウェア製品を中心に据え、IBMとハードウェアの戦いを挑むことを明らかにした。
米Oracleの年次ユーザーカンファレンス「Oracle Open World 2009 San Francisco」が10月11日、米国サンフランシスコで開幕した。初日の基調講演では、Oracleのラリー・エリソンCEOと同社が買収を発表しているSun Microsystemsのスコット・マクニーリ氏が登場。OracleがSolarisやSPARC、MySQLなどSunの製品にSun以上の金額を投資する考えであることを明らかにした。Sunの買収でハードウェアを手にしたことでエリソン氏は、米IBMに正面から戦いを挑むことを明言した。
「IBMと競争したい、Sunとの統合で巨人に立ち向かえる」――。エリソンCEOがはっきりとIBMに宣戦布告したのはこれが初めてだ。エリソン氏は、IBMがSolarisやSPARCなどSunの主力製品の開発をOracleはやめてしまうだろうという口説き文句で、Sunのユーザーに迫っていると指摘する。実際に載せ換えてしまったユーザーもいたとする。
エリソン氏は「SunのハードウェアとOracleのソフトウェアの組み合わせによるパフォーマンスを最大化させる」と繰り返した。iPhoneなどを提供するAppleを引き合いに出し「ハードウェアとソフトウェアを一体にしたエンジニアリングが成功の要因になっている」とし、それをOracleも実践すると強調した。
この日Oracleが発表したTPC-Cベンチマークに関する発表では、SunのSPARCサーバ上で稼働するOracle Database 11gと、IBMの主力製品であるPower595上で稼働するDB2との性能比較の結果を明らかにした。これによると、IBMの構成よりもトランザクション処理におけるスループットが26%上回った。表示速度によるパフォーマンスの比較ではIBMマシンの1.22秒に対して、SunとOracleの組み合わせは0.08秒となり「16倍も性能が勝っていた」としてアピールしている。
高性能のポイントになったのがフラッシュストレージ技術。OracleとSunの組み合わせはSun Storage F5100 Flash Arrayを活用したことにより、ハードウェアの利用率についてもIBMのベンチマークの最高結果と比べて8分の1にまで削減し、世界記録を達成したとする。
これまで、同じ「ソフトウェア会社」であるMicrosoftに矛先を向けることが多かったエリソン氏だが、ハードウェア以外では重要なパートナー企業でもあるIBMに対してあえて戦いを挑んだこの日の言葉は、脱ソフトウェア会社を目指すOracleを象徴するものといえる。
基調講演でエリソン氏はSunユーザーへの配慮を終始心掛けた。SPARC、Solaris、MySQLに対して、Sunが投じていた以上の金額を費やすと明言した。具体的に「SPARCおよびSolarisのハードウェアスペシャリストおよび営業担当者をSunによる体制の2倍以上に増やす」としており、数値目標の提示はSunユーザーの不安を鎮める効果も高いと考えられる。
一方、オープンソースのデータベース製品であるMySQLについて、エリソン氏はユーザー規模などの観点から「基本的にOracle製品とは競合しない」という考え方を示し、こちらについても「投資を増やす」と話している。
Sunによる10のイノベーション
オープニングを務めたSunのスコット・マクニーリ氏は「次にいつこんな大勢の前で話ができるか分からないので」と前置きしながら、Sunと歩んだ歳月を懐かしむかのように総括した。
Sunがもたらした10のイノベーションでは、「大量生産型の64ビットRISCプロセッサをつくったのはSunが初めて」とSPARCを振り返り、「世界でもっとも安定したOSであるSolaris」「25億台の携帯電話と10億台のPCに組み込まれているJava」のように、それぞれについてコメントしている。
「イノベーションはSunの中核だ。優秀な社員が支えてくれた」(マクニーリ氏)
企業向け情報を集約した「ITmedia エンタープライズ」も併せてチェック
関連記事
- Sun、フラッシュストレージ「Sun Storage F5100 Flash Array」発表
Sun Storage F5100 Flash Arrayは転送速度12.8Gbps。最大2TバイトまでSSDを搭載できる。 - クラウド時代のデータベース新潮流
- Sun Microsystems:革新者のジレンマ
Sun Microsystemsが明らかにした最大6000人に上る人員削減計画は、景気後退が予想以上の厳しさにあることを人々に実感させた。革新性から利益を上げることがいかに困難であるかを広く知らしめるものとなった。 - Javaの父、GoogleのAndroid戦略に「苦言」?
Javaの父ジェームズ・ゴスリング氏は、独自のJavaを使うGoogleに、「ほかのJavaスマートフォンとも仲良くしたら?」と苦言を呈しているのだろうか。 - 変化するデータベース
人によって定義が異なるなど不確かな要素も多いクラウドコンピューティングだが、今後のITシステムの主流になると考える人が多いのも事実だ。その鍵を握るのがデータベースである。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.