EMC、ミッドレンジ製品「CLARiX」と「Celerra」に機能追加――ファイル/ブロックの透過管理ツールも
EMCはミッドレンジストレージの効率化を図る新機能を発表。既存ユーザーにも提供する。
EMCジャパン(以下、EMC)は6月10日、同社のミッドレンジストレージ「EMC CLARiX」および「EMC Celerra」を対象とした機能強化を発表した。
強化された機能は、大まかに言って3点ある。1点めは「FAST」に“サブLUNの自動仕分機能”を追加したこと。従来からFASTでは、ビジネスポリシー/予測モデル/リアルタイムアクセスなどのパターンに従い、階層化されたストレージ内でのデータ移動を自動化する機能を提供していたが、今回の機能強化で、ストレージ内のサブLUNレベルにあるブロックデータをさらに細かい単位で分析したり自動移動したりできるようになった。
例えばあるストレージシステムにおいて、特定のLUN内に「使用頻度の高い少量のデータ」と「使用頻度の低い大量のデータ」が混在していると仮定する。従来は「パフォーマンスを重視し、LUN全体をEFD(Enterprise Flash Drive:EMCではエンタープライズ向けに可用性を高めたSSDを、このように定義している)に移動する」か「コストを重視し、LUN全体を安価なSATAドライブに移動する」かの二者択一であったが、今回の機能強化により、「ハイトランザクションな少量のデータはEFDに、そうでないデータはSATAに」といったストレージ階層化が可能になる。これはあらかじめ設定するポリシーに沿って自動運用(階層間移動)され、アプリケーションの変更や再開発も基本的に不要だという。
当然、システム全体のパフォーマンス向上を期待できるが、EMCの雨堤政昭 シニアプロダクトマネージャは「VMwareによる仮想化環境で特に顕著」だと話す。理由は「一般的なVMware環境下では単一のLUNに(パフォーマンス要件が大きく異なる)仮想マシンとデータストアを格納するケースが多いため」だ。
併せて、最大2テラバイトのフラッシュドライブをキャッシュとして利用する機能が追加された(2点めの機能強化)。これは「FAST Cache」と呼ばれ、従来あったキャッシュサイズの限界(これまではギガバイトレベルだった)を取り払うものとして位置付けられる。
一般にストレージシステムは、トランザクションやI/Oレベルのトレンド予測に基づき、構成される。予測の範囲内において投資やパフォーマンスが最適化されるが、想定を超えたI/Oの増大には耐えられない。FAST Cacheでテラバイト単位のキャッシュを備えておけば、このような際にもサービスの劣化を抑止できる。「FAST Cacheはストレージ管理の考え方を変える。これまで、予想外のトランザクションに対応するためにはシステムの構成変更や上位機種への買い替えが求められたが、EFDをキャッシュにするだけでまかなえるのだから」(雨堤氏)
3点めの機能強化は、「ブロックデータ圧縮機能」。データベースやメールなど、ほぼ全てのデータ種別に対し適用でき――システムに若干のオーバーヘッドは掛かるが――低使用頻度のデータから圧縮することで、最大50%の容量削減が期待できるという。このブロックデータ圧縮はシステムのバックグラウンドで行われ、またシンプロビジョニングやデータの重複除外といったEMCの既存機能と連携する。
ファイルアクセス、ブロックアクセスの状況はそれぞれを透過的に、管理ソフトウェアの「EMC Unisphere」で可視化できる。また今回の新機能を含め、CLARiXやCelerraはVMwareの「vStorage APIs for Array Integration(VAAI)」に対応する。VMware環境の管理者は、vCenterからストレージの監視やプロビジョニングを行えるとともに、従来サーバ側のリソースで行っていたストレージの各種機能を、ストレージ側にオフロードできる。これによりサーバを含めたシステム全体のパフォーマンス向上が期待できるという。
当日発表された機能は2010年7月以降の提供を予定しており、CLARiXやCelerraの既存ユーザーも、ソフトウェアのアップグレードと追加購入で利用できる。価格は「CLARiX CX4-120」、「Celerra NS-120」のいずれも、税込366万円から。
なおEMCの諸星俊男社長は「ワールドワイドとは違い、国内ではトップシェアを取れていない。“ハイエンド中心で高い”と国内市場でイメージされているのかもしれないが、ミッドレンジストレージの機能や価格においても“EMCが勝っている”と認識している。直販だけでなくパートナービジネスもこれまで以上に力を入れ、2、3年後には国内トップシェアを獲得したい」と意気込みを見せた。
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