不正行為をする人物を調べる方法:IT利用の不正対策マニュアル(1/2 ページ)
どのような人間が内部不正をしてしまうのか――。今回は不正行為をする人間の特徴と調査での注意点を解説します。
前回は人間が不正行為に及ぶ理由について解説しました。今回は不正行為をする確率が高い人物の特徴と、その調査をする上での注意点を解説します。
分析にみる不正の兆候
わたしも会員であるAssociation of Certified Fraud Examiners(ACFE、公認不正検査士協会)は、20年以上にわたって内部不正の分析を行っています。ACFEが会員に公開している情報から、分析結果の一部を紹介しましょう。ACFEが取り上げる「不正の兆候」は、歴史的にみてほとんど変化がありません。
- 雇用主に重宝されている(出勤時間が早い、夜遅くまで残業する、休日出勤もいとわない、仕事を家に持ち帰る、病欠以外は休まない、休暇を取ろうとしないなど)
- 単独で業務をこなしている
- 定期的な調査に抵抗感を示す
- 自分の仕事場に人を近付けたがらない
- 事業主に業務記録を見せたがらない
- 次から次へと仕事を引き受けようとする
読者の感性からすると、「予想とまったく逆ではないか?」という項目が多いのではないでしょうか。
また、わたしが評価している書籍に「企業不正対策ハンドブック」(ジョセフ・T・ウェルズ著、第一法規刊)があります。この中では不正対策の分野における権威であり、ACFEの初代会長を務めた米ブリガムヤング大学のスティーブ・アルブレヒト教授らによる考察として、不正実行者の9つの特徴を挙げています。
- 自分の資力を超えた(分不相応な)生活をしている
- 私利私欲を抑えきれない
- 個人的に多額の債務を負っている
- 顧客と密接なつながりを持っている
- 給料が自分の責任に見合っていないと感じている
- 自分はやり手である、仕事ができるという態度をとる
- 組織体制を出し抜こうという強い意欲を持っている
- 過度のギャンブル癖を持つ
- 家族または同僚からの過度なプレッシャーを感じている
内部不正をする可能性が高い人間について、前回紹介した「不正のトライアングル」(動機・プレッシャー、機会の認識、正当化)に合致するような場合でも、「清廉潔白」と思われる人が多数います。逆にトライアングルに合致しなくても犯罪に至る人もいます。しかし、このようなケースは「例外」でしかないと考えるべきでしょう。
分析結果を踏まえると、内部不正をしてしまう(あるいは既にしている)人間とは、確率論的に言っても上記に挙げた特徴を持つ人物である場合が多いということになります。まずは、これらの特徴に近似している人物のケアや、原因を排除する支援を講じることが必要です。
なお、これは一般的な特徴を挙げているにすぎません。調査を始める前には、情報セキュリティの管理者やコンサルタントとしっかりと相談することが望まれます。
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