「いずれパブリックがプライベートを逆転するのでは」――OracleのVP:クラウド進化の方向性
報道陣とのラウンドテーブルに臨んだOracleのロバート・シンプ氏は、企業のクラウド導入モデルとしては「ハイブリッドクラウドが現実的」としつつも「いずれパブリックが逆転する時期が来るのでは」と話す。
日本オラクルは12月16日、報道陣を対象にしたラウンドテーブルを開催。来日した米Oracleのロバート・シンプ氏(プロダクトマーケティング担当グループ バイスプレジデント)が同社のクラウドコンピューティング戦略について説明した。
今やすっかり耳慣れた言葉となった“クラウド”だが、ベンダーやユーザーによって、その定義に微妙な差がある。Oracleの場合、リサーチ会社のガートナーが2010年3月に打ち出した「スケーラブルかつエラスティック(柔軟で伸縮自在だということ)なITによる能力を、サービスとして提供するコンピューティングモデル」という定義が妥当だと考えているようだ。
上記を満たすクラウドの実装モデルとしては、クラウド事業者が管理する共通基盤上のサービスであるパブリッククラウドと、ユーザー企業のIT部門が運用し、自社のみで利用するプライベートクラウドが挙げられる。だが現時点では、どちらも完全無欠のクラウドモデルだとはいえない。先行投資コストや運用負荷が低いパブリックには、SLAやセキュリティに不安を感じる企業があるし、プライベートはサービス品質やガバナンスに期待ができるが、一定の運用負荷や初期コストを見込む必要があるからだ。そのため最終的には「企業IT環境は、プライベートとパブリックをミックスして導入する、いわゆるハイブリッドクラウドに進化するだろう」とシンプ氏は指摘する。
そのためOracleとしては「ユーザーに選択肢を提供する」(シンプ氏)という観点から、パブリック、プライベートの両輪において「完全なエンタープライズクラスのクラウドを保証していく」(シンプ氏)という。
エンタープライズ用途の各種アプリケーションだけでなく、今や米Sun Microsystemsの買収によりハードウェアも手に入れたOracleとしては当然のスタンスだともいえるが、シンプ氏は「セキュリティやSLAにこだわるユーザーの最初の選択肢として、プライベートクラウドが支持されている。つまり現在のビジネスの主力はプライベートクラウドだが、パブリッククラウドは技術的にもビジネス的にも今後の“のびしろ”が大きい。時期を明示できる段階ではないが、いずれ比率が逆転するのでは」との見解を示した。
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