「実行されない戦略は妄想である」――サービスマネジメントが“Execution”を問う:IBM Pulse 2011 Report(2/2 ページ)
サービスマネジメントを主題にしたIBMの年次カンファレンス「Pulse」も4回目を数え、ゼネラルセッションのテーマはコンセプトから「実行力」へと移りつつある。無定見なオープン化を「愚かなこと」とし、ワークロードの統合を訴えるIBMの真意はどこに?
IAサーバ偏重は「愚かな考え」
ゼネラルセッションのプログラムの中でも、今回最も「アツい」スピーチをかましたのは、ソフトウェアおよびシステムグループを統括する上級副社長、スティーブ・ミルズ氏であると、記者は判断する。冒頭から「ITは炎と同じ。便利だが、家そのものを燃やしてしまうリスクもある。現在ITは、爆発的に拡大しているが、その全てがビジネスに貢献できているわけではなく、むしろ重荷になっている部分もある。ITのインフラに金が掛かりすぎている、ということだ」と問題提起する(この時、聴衆から苦笑いが漏れたように、記者は感じた)。
ミルズ氏は気にせず続ける。「取得コストにばかり着目し、運用コストを重視しない傾向は嘆かわしい。ITは、適切な対象に、適切な量で投資されなければならない! 物理設備はコンソリデートし、冗長なデータやソフトウェアも統合する。あなたの会社では、複数の資産台帳が存在してはいないか? もしそうだとしたら、それは大いにムダが生じているということだ」(ミルズ氏)
さらにミルズ氏は例え話を披露する。「多数の従業員を遠隔地に移動させる際、航空機をチャーターするか? それとも乗用車を連ねていくのか? 答えは明白だ」(ミルズ氏)。これをITシステムに当てはめれば、多数のサーバをスケールアウトさせて使うのか、それともワークロードをまとめるべきなのかという選択肢につながる。
冗長なハード、冗長なアプリケーションは統合しよう。そして余分なライセンスはキレイに清算しようというのがミルズ氏の主張だ。「フットプリントをできるだけ小さく。いらないものは、eBayで売ってしまえ!」(この辺りで聴衆は同氏のペースに引き込まれる)
これをExecutionするための解として提示されたのが、zEnterpriseだ。「ITに“Fit for Purpose”をもたらすのがzEnterprise。可視化を進め、リクエスト指向のシステムにする上ではTivoli Provisioning Managerが役に立つ」とミルズ氏は話す。「こういった(zEnterpriseを軸とした)モデルは、インテルビジネスにコミットする企業からは絶対に提案されない! そしてHPや、Oracleからも批判されるだろう。だが彼らには言わせておけばよい。なぜなら彼らは、自分ではできないことをうらやんで批判しているだけなのだから!」(ミルズ氏)
この後ミルズ氏は、ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)がzEnterpriseの導入により、3年で8000万ドルものコストを削減したケースなどを紹介。「ITの世界では“愚かなこと(オープン化の流れを指す)”が長年行われてきたが、伝統的な考え方(IAサーバによるスケールアウト型のシステム構築を指している。これが“伝統的”と表現されることに新鮮な驚きがある)に固執せず、最大のことを最小のフットプリントで実現するシステムを目指そう」(聴衆からは喝采)
なおPulse2011には、日本からも80人を超える参加者があった。IBMのパートナーでありながら、自身もユーザーであるエクサの津田宏臣氏と武市正人氏は初めての参加。それぞれ「ISMを通じて、既存のIT資産を削減しても、同等あるいはそれ以上のビジネス効果を生めることが分かった」(津田氏)、「戦略は実行しないと妄想である、というフレーズが印象に残った。実行するためにISMが必要だということ」(武市氏)と感想を述べた。
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「ISM(統合されたサービスマネジメント)なんて言ったって、そううまくは行かないんじゃないの?」――このような聴衆内の“懐疑派”に対しIBMが提示したのは、企業や行政、そして医療機関による各種証言である。
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