第7回 IT環境の復旧・復興に向けて:東北地方太平洋沖地震からの復興 ── リスク管理、危機管理、そして復旧(3/3 ページ)
東北地方太平洋沖地震の危機に直面し、これから事業継続・復旧対応を進める企業の一助になればとITmedia エンタープライズ編集部では危機管理の専門家に連載をお願いした。今回は、ITの事業継続マネジメントについてまとめた。
自治体敷地内や自社敷地内にすべてのIT資産を置く場合、その拠点が全損したり、ビルの崩壊やサーバルームの浸水・火災などがあったりすると、すべてのIT環境が失われてしまう。この点を大まかに図2で図解しておこう。
どちらの図もわたしの「なぜクラウドコンピューティングが内部統制を楽にするのか」(技術評論社)から引用した。
早期復旧・コスト低減・危機管理対応にクラウドが合致
自治体も企業も、業務を早期に復旧しなければならない。また、そこにかかるコストが高額では、必要なだけのIT環境をすぐに整えることが難しい。幸い今回の震災に際しては、IT企業も復興支援の一環としてクラウドサービスを無償で提供し始めている。クラウドならIT企業側も負担が比較的軽く済むのであろう。クラウドユーザー、クラウド提供者の双方に緊急支援上のメリットがある。
また、クラウドなら複数拠点にデータをバックアップしておく労力も省ける。クラウド提供者が遠隔地の複数拠点でバックアップしてくれているからだ。今回の震災のように自治体機能が丸ごと津波で崩壊された場合でも、例えば、近隣の自治体で被害を免れた会議室を借りてネットの向こう側にあるクラウドにアクセスすれば業務を再開しやすい。テレビでは町ごと近隣の県に移った自治体が紹介されていたが、場所は移っても自分の市町村の自治体機能を復旧できる。
つまり、「その場」にとどまることにこだわらなくてよくなるのだ。インターネットさえあれば、防災対策を講じて人の命を大切にでき、また、いざとなれば、どこからでも自治体機能を回復できるIT環境を整えてもらえればと思う。
自治体・企業だけでなく、医療機関でも電子カルテ化とクラウド化が望ましい。被災した場合も主治医や大病院での精密検査の情報を利用できる範囲は広がるだろう。医療連携・被災時の医療継続もクラウドが担う役割になるかと思われる。
依然、東北地方では厳しい寒さが続き、空はお構いなしに雪を降らせる。本連載は次回で最終回となるが、福島第一原子力発電所の危機は予断を持てない状況だ。関係者の決死の努力が実を結ぶことを祈るしかない。
お知らせ
日本マネジメント総合研究所では2011年4月末まで、企業規模・団体の規模にかかわらず、災害対策に必要な相談やアドバイスなどの危機管理支援コンサルティングを無償提供することを決定しました。メール、電話、FAX、郵便で受け付け、時間の許す限り対応します。
日本マネジメント総合研究所 理事長・戸村智憲
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プロフィール 戸村智憲(とむらとものり)
日本マネジメント総合研究所理事長。早大卒、米国MBA修了、国連勤務にて国連内部監査業務の専門官などを担当。企業役員として監査統括、人事総務統括、(株)アシスト顧問、JA長野中央会顧問、岡山大学大学院非常勤講師などを歴任する。現在、企業や医療福祉機関、農協などのリスク管理・危機管理を指導している。
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