データセンターの運用コストを下げる施策、シスコのユーザー企業が事例を紹介
シスコのデータセンター向けソリューション「Cisco Unified Computing System」の導入効果について、ユーザー企業であるNTTデータとトッパンシステムソリューションズが実績を交えて紹介した。
シスコシステムズは5月31日、データセンターソリューション「Cisco Unified Computing System(UCS)」の導入効果を紹介するメディア向けセミナーを開催。UCSのユーザー企業のNTTデータとトッパンシステムソリューションズが取り組み状況を発表した。
UCSはサーバやネットワーク、ストレージを、仮想化技術を活用して統合することでデータセンターの運用効率を高めるソリューション。最初の製品が2009年にリリースされ、5400社以上が導入している。
システム基盤を共通化したNTTデータ
NTTデータは、UNIXベースで構築したシステム基盤の更新に合わせて、2009年にUCSの採用を決定。1年以上をかけて移行を進め、今年5月に最初のカットオーバーを迎えたばかりだ。システム基盤の更新ではコストを50%削減することが目標になり、それを実現できる方法としてUCSに注目したという。
アプリケーションの運用を担当する基盤システム事業本部の小林武博氏は、「アプリケーションごとに冗長構成のシステムを構築していたことが一番のコスト要因になっていた。基盤を共通化することで、運用を含めてのコスト削減を目指した」と述べた。
移行作業では、まずアプリケーション資産の棚卸しを実施。業務プロセスの優先度に応じてシステム基盤をパターン化し、ファシリティからサーバまでを共通の基盤として構築した。LinuxのIAサーバの採用と、仮想化による物理サーバの削減によって、構築に伴うコストを大幅に削減した。
また運用面は、統合管理ツールの「UCS Manager」を利用することで、管理するサーバ数が増えても業務は増えないという。将来のサーバの増加が与える影響についても検証し、ラックマウントで対応する場合は、段階的にコストが上昇していくことが、UCSではラックマウントよりも上昇分が少ないことが分かったとしている。
小林氏によれば、こうした取り組みで向こう5年間の全体コストを50%削減できる見通しだという。
本気度を評価したトッパンシステムソリューションズ
凸版印刷グループの情報システム部門の統合で2010年に設立されたトッパンシステムソリューションズは、今年2月に開始したホスティングサービス「TOPICA」の運用基盤としてUCSを導入している。
同社では2015年に売上高を2倍にする事業目標が掲げられ、そのための新サービスを早期に立ち上げる必要があった。サービス基盤の構築で条件となったのは、低価格・短納期・高い柔軟性・低廉な運用コストなどであった。数社のベンダーから提案を受けて検討し、条件をクリアできるのがUCSであったという。
運用サービスを担当するITサービス本部の斎藤伸雄氏は、UCS採用について次のエピソードを披露した。
「以前にシスコの製品で“苦い”経験をし、最新技術には手を出さないという文化ができてしまった。UCSに対する懸念もあったが、サーバが枯れた技術になり、これからはネットワークが重要になることを考えると、UCSに可能性があるのではないかと判断した」
導入前にはUCS環境の運用方法などをシミュレーションし、サポート体制も含めて不安材料がないかを確認した。斎藤氏は、「シスコのいかに本気であるかが分かった」と述べ、特にUCS Managerによって運用を簡素化できる点を評価しているという。
シスコ自身も導入中
シスコの専務執行役員 石本龍太郎氏によれば、現在はUCSの自社導入を進めている最中とのこと。今年始めに最初のカットオーバーを迎え、2012年に向けてUCSベースのプライベートクラウドを構築中である。導入効果の一例では、業務アプリケーションのパフォーマンスが高まり、SAPのシステムで70%の向上が図られたという。「体感では処理時間が半分以下になった」と石本氏。
また構築中の環境では、製品開発担当者の業務効率の改善や生産性の向上も狙う。従来は製品開発に必要な環境を担当者がすべて用意しなければならず、準備に6〜8週間を要していた。「製品の選定や調達などの業務が重荷になっており、開発作業に集中できる環境にしたいと考えている」(石本氏)。最終的には、必要な環境を15分ほどで準備できるようにし、全体コストを半分以下にするという。
石本氏は、UCSの最大の特徴に運用コストの削減を挙げ、UCS Managerによる統合管理が結果的に戦略的なIT投資を可能にすると強調している。
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