Watsonは医師にとってカーナビのようなもの:IBM Information On Demand 2011 Report
いよいよ米IBMのスーパーコンピュータ「Watson」の商用向けサービスがスタートする。
米IBMは、クイズ番組のチャンピオンに輝いたことなどで知られる同社のスーパーコンピュータ「Watson」に採用されている技術を応用した商用アプリケーション開発について、米国・ネバダ州ラスベガスで先週開かれた年次カンファレンス「IBM Information On Demand 2011」の中で、その具体的なソリューションを示した。
まずはヘルスケア分野からスタートする。米最大手の医療保険会社であるWellPointとパートナーシップを結び、保険システムにWatsonの能力を取り込む。具体的には、保険加入者が入院する際の承認業務をWatsonのデータ解析結果に基づいて行う。
米国では一般的に、入院や手術に当たっては保険会社の事前承認が必要であるが、Watsonが患者の過去の診断記録や検査結果に加えて、大量の医学文献、最新の研究成果などさまざまなデータを解析し、確信度の高い診断や最適な治療法を導き出すことで、保険会社や医師の意思決定を支援することが可能となる。
では、なぜWatsonはヘルスケア分野において有効なのか。米IBM Watson Solutionsでゼネラルマネジャーを務めるマノジ・サクセナ氏は「ヘルスケアに関する情報は流動性が激しく、データ量は年々倍になっている。まさにビッグデータを扱っているのだ。一方で、それがさまざまな問題を引き起こしている」と現状を説明する。例えば、米国において、診察の5分の1が不完全なものであり、処方せんのミスが毎年150万件発生しているという。
「このような複雑な分野においてWatsonの能力は重要になってくる」とサクセナ氏は強調する。Watsonは医療文献約100万冊に相当するデータを高速に解析し、3秒以内に正確な分析結果を導き出せるという。
ただし、いくらデータの精度が高くても、最終的に意思決定を下すのは医師だという。「Watsonは医師にとってカーナビのような存在だ」とサクセナ氏は述べた。
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