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銀行員が支店を転々とする理由とは?えっホント!? コンプライアンスの勘所を知る(2/2 ページ)

今回はコンプライアンスの側面からみた違反防止策の一つとして、金融機関で行われる「銀行員の配置転換」を考えてみたい。

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だから異動する

 こうしたさまざまな要因が重なり合い、そのストレスの解消も含めて後任者にバトンを渡すという異動が繰り返される。「担当者が異動となり、本日より私が担当として着任いたしました。今後とも前任者同様ごひいきの程、心からお願い申し上げます」という筋道が見えてくるのである。コンプライアンスという側面からは、これはとても良い方策であると筆者は考えている。

 「前任者の責任を後任者に転嫁するだけではないか」とみる人もいるかもしれないが、大抵の場合そうならない。前任者の怠慢であるケースが一割前後あるが、その場合は取引の見直しに至る場合がある。しかし、前任者が思いつかない方法が後任者の別の視点で見えてきたり、環境が少しずつ変化するに従って見直しを行った結果、融資の継続が正式な評価になったり、逆に悪化した場合には企業倒産を回避するために救済措置を施すような場合になったりする。それでも救えなくて実際に倒産に至るような最悪のケースでも、後任者は以前の案件を引き継いだだけなので精神的にその処理は相当に楽だろう。

 この部分は“日本的な考え”とみることもできる。欧米的な考えではせいぜい「不正を防止する」「企業との関係をクリアにする」という観点になるのだろう。コンプライアンスの側面から考えるなら、不正を防ぐために精神面を重視した制度を取り入れるという方策も“ありではないか”と筆者には思える。むしろ、重要な観点だと今までの経験からそう考えている。

 いずれにしても、これらの考え方が混在して「銀行員の異動は頻繁にある」という事実につながり、結果としてコンプライアンスの向上に役立っている。余談だが、銀行員の彼と結婚を考える女性には頻繁な異動を受け入れることが必要だと感じてはいるが、まあ個人的なことでもあるのでここでは言及しないでおきたい。

萩原栄幸

一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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