モバイルワークスタイルとクラウドサービスをつなぐ――新製品群が多数登場:Citrix Synergy 2012 レポート
Citrixは年次カンファレンス「Citrix Synergy 2012」で多数の新製品やサービス、新規プロジェクトを発表。国内での展開を含めて改めて取り上げてみたい。
米Citrix Systemsは、5月上旬に米国サンフランシスコで年次カンファレンス「Citrix Synergy 2012」を開催した。約6300人の顧客企業やパートナー企業関係者が来場したという。5月31日にはカンファレンスで発表された新製品やサービスと、新規プロジェクトの「Project Avalon」について国内関係者向けに説明が行われた。
現地レポートでも取り上げたように、モバイル環境を活用した柔軟なワークスタイルの実現とこれを実現するクラウドに軸足を置く同社は、今回のカンファレンスで「モバイルワークスタイルとクラウドサービスの融合」をテーマに掲げた。発表された製品やサービスもこれに準じたものになっている。
クライアントサイドの注目施策
モバイルワークスタイルについて同社は、「人」「データ」「アプリケーション」「デバイス」という4つの視点で製品やサービスを展開する。
2011年秋に開始したストレージ・ファイル共有サービスではユーザーがオンプレミスを含む任意の場所にデータが置けるように機能を拡張。クライアント端末で利用するCitrix Receiverにもこの機能が組み込まれた
Citrix Receiverと社内システムをつなぐゲートウェイソリューションの「CloudGateway」はバージョン2に強化。モバイル向けのネイティブアプリケーションやHTML5のWebアプリケーション、ストレージ・ファイル共有サービスの機能が追加され、7月にリリースする予定
「デバイス」の部分では高度なユーザー体験を提供するための技術「HDX」も強化されるという。新たに「ディープコンプレッションCODEC」を搭載し、三次元CADのなどのデータをリモート環境でも滑らかに描画できるようにするほか、リモート環境からさまざま場所に印刷出力できる「Universal Printing」や、ユニファイドコミュニケーションでの品質を高める拡張も図るという。
HDXはハードウェアベンダーにも提供され、各社がHDXを取り入れたチップセットやシンクライアント製品などの開発も進めている。この施策は昨年秋に発表されたものだが、既に従来の機能のままでも製品価格を半分にできるまでになった。Synergy 2012では米HPがHDXを採用したシンクライアント端末の新製品を披露している。
このほかにクライアントハイパーバイザー技術の「XenClient」でEnterprise Editionを追加。XenClientを全社展開したり、自動でのバックアップ/リカバリ、ポリシーやセキュリティのコントールが可能になるなど管理性が増すという。
クラウドサイドの施策
一方、クラウドサービス側の取り組みではクラウド技術基盤「CloudStack」をApache Software Foundationに寄贈したことから、今後はオープンソースコミュニティーでの開発が主体となる。同社はこれを商用版の「Citrix CloudPlatform powered by Apache CloudStack」という名称で提供していく方針。CloudStackは100社以上のクラウド事業者に採用される規模に拡大した。
複数のクラウド環境を接続するソリューションの「CloudBridge」もバージョン2に強化され、パブリッククラウドサービスの提供に必要な機能を標準メニューとして利用できるようにした。アプリケーション配信ソリューションの「NetScaler」では最新版OSを提供。アプライアンス内で仮想マシンとしてのNetScalerを最大40マシンまで稼働できるほか、アプライアンス自体を32台までクラスタリングできるようにする。
また、Synergy 2012ではクラウドサービスの新たな提供方式を目指すという「Project Avalon」が発表された。シトリックス・システムズ・ジャパンの伊藤利昭マーケティング本部長によると、Project Avalonでは企業の情報システム部門が社内(および企業グループ内)のユーザーに対して、総合的なITサービスを提供できるようにするための、標準的な仕組みを実現していくという。
現時点では詳細は固まっていないものの、オンプレミスで稼働する業務アプリケーションや仮想デスクトップ環境、社内外の各種クラウドサービスを統合し、ユーザーに応じた形で一元的にサービスとして提供することを狙う。ユーザーが自身のポータルから必要なメニューを選択するだけで幅広いサービスが受けられるようになる。
Project Avalonが最終的にどのような形態になるかは不透明だが、同社では既存の製品やサービスを要素技術として用い、新たに開発する技術を組み合わせて実現する計画。今年後半からベータプログラムを開始するという。
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