キヤノンの異色デジカメ「PowerShot N」が生まれた理由:IBM CMO+CIO Leadership Forum Report(2/2 ページ)
米IBMおよび日本IBMが、オンラインマーケティングのカンファレンス「CMO+CIO Leadership Forum」を都内で開催。ユーザーとして登壇したキヤノンマーケティングジャパンの村瀬会長は「データの分析が新ビジネスにつながる」と話す。
キヤノンの異色カメラ「PowerShot N」が生まれた理由
「企業はお客様なしでは成り立たない。お客様の声に耳を傾け、いい関係を築き、それを維持していくことが最優先課題だ」と語るのは、キヤノンマーケティングジャパンで代表取締役会長を務める村瀬治男氏だ。
同社は「顧客主語」をスローガンに、オンライン/オフラインを問わずさまざまなチャネルを活用してユーザーの声に耳を傾けてきた。その結果生まれた商品の1つが、独自機構を採用した異色のコンパクトデジカメこと「PowerShot N」(4月25日発売予定)である。
PowerShot Nの最大の特徴は、1回のシャッターで表情の異なる6種類の写真(オリジナル画像を含む)を撮影できる「クリエイティブショット」機能だ。村瀬氏は同機能について「カメラの側から(写真の構図や色を)ユーザーに提案してくれるもの」と表現する。このほか、Wi-Fi経由で写真をワンタッチでソーシャルメディア上に共有できる機能なども備えている。
これらの機能の背景にあるのは、消費者が写真に求める価値の変化だという。
「これまでのカメラは、撮影者の意思に沿い、いかに被写体を忠実に美しく写すかというコンセプトで作られてきた。だがソーシャルメディアが普及した今、従来とは全く違った方法で写真が活用されるようになった。“いいカメラ”や“きれいな写真”などの言葉の持つ意味が多様化する中、PowerShot Nは新しい概念を生み出そうという試みなのだ」(村瀬氏)
従来のカメラとは売り方も変えるという。発売当初は同社の直販サイト限定で販売し、顧客の関心データや感想などを集めていく。また、Facebookをはじめとするソーシャルメディアを活用して情報を発信し、ユーザー間のクチコミによる情報拡散を狙うという。
同社の取り組みはこれだけではない。2012年に発売したレンズ交換式デジカメ「EOS M」は、キャンペーンサイト上に「ソーシャルカタログ」と呼ぶ仕組みを用意。カメラの各機能にユーザーから“投票”してもらうことで、初めて訪れたユーザーでも注目の機能が分かりやすいようにした。
ITの発展により、企業や社会を取り巻く変化のスピードが早くなったと村瀬氏は言う。そうした中、同社はこれまで法人向けと個人向けでそれぞれ運営してきたWebサイトを一本化する計画もあるという。
「今では法人か個人かを問わず、顧客のWeb上での行動データを蓄積することが重要になった。そうしたデータの分析こそが新ビジネスにつながり、顧客やパートナーに価値を還元できるのだ」(村瀬氏)
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