一部の人だけのものではない 目指せ日本型テレワーク:サイボウズ流の働き方(3/3 ページ)
時間や場所にとらわれない働き方「ウルトラワーク」を実践するサイボウズ。同社とは異なるアプローチでテレワークを実践する企業での取り組みを、サイボウズのフェローを務める野水克也氏が取材した。
野水 バーチャルオフィスとは、具体的にはどういうものですか。
田澤 プレゼンス管理の一種なのですが、視覚的に一体感を感じられるのが特徴です。
この画面を見ていただければ分かると思いますが、それぞれの机や会議室などが画面上に配置されていて、例えば、会議室に入った瞬間にそこにいるメンバーの声が聞こえて来ます。その他にも、マウスで人のアイコンをクリックして社員を社長室に呼び出したり、逆にその人の部屋へちょっかいを出しに行けたりします(笑)。ちゃんとドアを閉めることができ、ノックの音まで出るんですよ!
野水 あ、ホントですね! ノックどころかドアを閉める音までちゃんと聞こえますね。
田澤 私が出張でホテルで仕事をしていても、朝9時になると、みんなが出社してくる様子がよく分かります。昼休みの時間になると、続々とアイドル状態になっていって、夜には残業している人がぽつりぽつりいるみたいな感じです。本物のオフィスみたいですよ。
マイクをつないでいたりキーボードを叩いていたりという様子までアイコンで表示され、自動的に働いている状況が可視化されるので、まるでリアルにみんながつながっているように感じられるますね。今、みんなが働いていて誰が何をしているかをリアルに共有する感覚が実は大事だったと、このツールを採用して気づきました。
野水 なるほど、確かにこれならリアルな職場を再現できますね。
田澤さんに取材という形で伺って分かったことは、サイボウズの場合は、ワークスタイルの自由化と企業の生産性の向上やクリエイティブな職場環境を目指しているのに対し、テレワークマネジメントの場合は、時間と場所の制約にとらわれず、どんな働き方でも普通に働ける会社を目指しているという違いでした。
自由なワークスタイルは、自由である反面、社員の自律性や成果へのコミットメント、一人で完結できるビジネススキルが求められます。もちろん、それによって会社も個人も成長することを期待しているのですが、仕事に対する価値観を柔軟に変えられる人がたくさんいるわけではありません。
インタビューに出てくる「10人のうち10人がテレワークしていてもマネジメントできる会社」は、逆に10人のうち10人がテレワークによってでも働ける会社であり、今までの仕事をどこでも続けられるアプローチという日本的なテレワークを目指しているようです。
先日、米Yahoo!のマリッサ・メイヤーCEOが「在宅勤務禁止」発言をしてネットを賑わせましたが、メイヤーCEOが在宅勤務を禁止する理由は、自律性や成果へのコミットメントが問われるワークスタイルではなかなか成果が出せない人が多いということを問題視したものです。でも、全員がテレワークで働ける日本型テレワークの場合は、関係ありません。
テレワークマネジメントの目指す、時間管理も労務管理もコミュニケーションも普通にしながら、どこでも働ける「テレワーク」は、多くの日本企業で抵抗なく受け入れられるものである気がしました。
関連記事
- 働き方の自由化? 社畜化推進? 伝統的ワークスタイルへの挑戦
時間と場所の制限を取り払う働き方「ウルトラワーク」を実践するサイボウズ。それは伝統的な就業文化への挑戦ともいえる。同社はどう立ち向かっているのか――。 - 「中の人」が語るウルトラワークの実態
サイボウズは2012年夏から、時間と場所の制約を無くした「ウルトラワーク」を実験している。外回りの多い社員やオフィス業務がメインの社員はどう感じているのか。多様な働き方に挑む同社の内側をフェローの野水克也氏がレポートする。 - 「ウルトラワーク」は勝ち残るための企業戦略
時間と場所の制約を無くした「ウルトラワーク」に取り組むサイボウズ。同社はなぜウルトラワークを実践するのか――“中の人”ことフェローの野水克也氏が紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.