10年の時を超えてクラウド基盤になったHANA:SAPPHIRE NOW Orlando 2013 Report
最終日となった「SAPPHIRE NOW Orlando 2013」の基調講演には、SAPの共同創設者であるハッソ・プラットナー氏が登壇した。
企業アプリケーションのプラットフォームに
5月16日(米国時間)、独SAPがユーザーやパートナー向けに開催している年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW Orlando 2013」は最終日を迎えた。過去2日間よりも30分前倒しでスタートした早朝のキーノートでは、昨年と同様、SAP創業メンバーの一人であるハッソ・プラットナー氏と、最高技術責任者(CTO)のビシャル・シッカ氏が登場した。両氏はSAPのあらゆる製品・サービスの基盤としてインメモリデータベース「SAP HANA」が持つコンピューティングパワーが必要不可欠であることを改めて強調した。
元々HANAという名は「HAsso's New Architecture」に由来する。およそ10年前にプラットナー氏が思案し、2006年にドイツ・ポツダム大学の学生たちとERPをインメモリデータベースで動かすための議論が出発点になっているという。「今や数百ものアプリケーションがHANA上で動いている。HANAはエンタープライズアプリケーションの真のプラットフォームになったのだ」とプラットナー氏は力を込める。
製品リリース当初のHANAは、一般的に高速データ解析エンジンという位置付けだった。その後インメモリデータベースとして認知が広まり、このたびのミッションクリティカルな基幹業務アプリケーションをクラウドで提供する「HANA Enterprise Cloud」やSAPのクラウドサービスを統合する基盤「SAP HANA Cloud Platform」の登場によって、まさに今、クラウドを支える基盤となった。
現在、HANAはグローバルで1357社に導入されており、847のインプリメンテーション実績がある。Amazon Web Service(AWS)上で利用可能なサービスである「SAP HANA One」は600以上、HANAを活用したSAPのソリューションは70以上あるという。
今回HANAのユーザー事例として紹介された1社が、イリノイ州に本社を構える農耕トラクターメーカーの米John Deereである。同社はHANAを基盤としたERP製品「SAP Business Suite powered by SAP HANA」を先行して採用。膨大なデータを現場の農耕機などから吸い上げ、1つのダッシュボードでリアルタイム分析できるようになった。これによって、KPIを7〜9割改善するなどの大きな成果をもたらした。
「デザイン・シンキング」を取り込め
また、キーノートではシッカ氏からHANAを含む新たなソリューションに関するアナウンスがなされた。
それらのソリューションを開発する上で、根底にある哲学が「デザイン・シンキング」だ。デザイン・シンキングとは、イノベーティブなアイデアを実現するためのプロセスを指し、デザインコンサルティングファームの米IDEOなどが提唱してきた方法論である。
「デザインは素晴らしいソリューションを生み出す。デザイン・シンキングによってビジネスの問題を把握し、ビジネスを再発明につなげていく。その際に重要なのがユーザーエクスペリエンス(UE)だ」(シッカ氏)
それを具現化した新製品の1つが「SAP FIORI」である。FIORIは、コンシューマーを意識したデザインやユーザーインタフェースを実装したHTML5ベースの企業向けアプリケーションセット。購買承認ワークフローやセールスオーダー、カスタマーインボイスなど、一般的な業務で利用するような25種類のビジネスアプリケーションから成り、モバイルデバイスでもPCでもシームレスに使うことができる。
「世の中の企業アプリケーションは40年前からデザインが変わらずマンネリ化している。今後SAPでもすべての製品にFIORIのようなUEを採用しなければならない」(シッカ氏)
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