「Machine-to-Machine」の略で、ネットワークに接続されたさまざまな機器が、人間を介することなく通信を行い、情報をやり取りすることを指す。
インターネットの普及により、人々の持つPCがネットワークへ接続し、さまざまな情報をやり取りするようになった。また、モビリティ技術の進化により、多くの携帯電話やスマートデバイスがネットワークに接続されるようになった。現在では、産業機器、監視カメラ、自動販売機、POSレジ、自動車といった機器がネットワークに接続され、情報をやりとりするようになった。
さまざまな機器がネットワークに接続するようになると、今までのように販売時点でサプライチェーンが終了するモノづくりから、販売後も継続的に情報をやり取りし、顧客とのつながりを重視するサービス指向のモノづくりへと進化する。また、企業内の情報だけでなく企業外の情報ソースと連携することで、ユーザーの嗜好やコンテキストに合わせたサービス、機能を提供できるようになる。そのための高付加価値なアプリケーション、端末、機器も次々と登場することになるだろう。
近年のクラウドコンピューティングもM2Mの広がりに拍車を掛けている。ネットワークにつながる機器から吸い上げられる各種データをリアルタイムでネットワーク上に保管し、その膨大なデータによって今起きていることを把握し、次に起こることをシミュレーションして予測するといった基盤をより低コストで実現できるからである。
M2Mで吸い上げたデータを加工し、新たなサービスとして収益を生み出すチャンスも存在する。例えば、ドライバーの運転記録をベースにした情報を保険会社と連携させ、安全運転度の高いドライバーに安価な保険料を適用したり、特定エリアにおける気象情報(天気、温度、湿度、降雨量、日照時間など)や農作物の栽培情報(土壌、水分、肥料の量など)を農家に提供したりすることで、収穫高向上や品種改良に適用できる。
幅広い業界において活用可能なM2Mではあるが、さらなる普及と新ビジネスへの活用に向けた課題も存在する。例えば、機器間でやり取りされるデータのフォーマットやプロトコルの標準化、ベンダーおよびサービス間での相互運用性の担保だ。特に通信事業者は、ネットワークサービスだけでなく、M2Mを実現するためのサービス提供プラットフォームで市場を主導すべく注力している。
これまでにない異次元の経営モデルの実現に向けて、M2Mは今後企業が積極に取り組むべき領域の1つである。そこでは、スマートデバイスを活用して現場の情報をリアルタイムに収集することで、顧客の動きを洞察するとともに、社内の業務プロセスを可視化できる。さらに、ヒト・モノ・カネといった情報を仮想的な現実世界の写像としてデジタル世界で展開し、さまざまなシミュレーションを行って近未来を予測することで、次のアクションを決定することが可能となる。
執筆者
藤山俊宏(ふじやま としひろ)
アクセンチュア株式会社 テクノロジー コンサルティング本部
テクノロジーアーキテクチャ グループ シニア・マネジャー
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