「Bring Your Own Device」の略で、会社から支給される端末の代わりに、個人の所有するスマートデバイス(スマートフォンおよびタブレット)を業務に利用することを指す。
2007年に米Appleが発表したiPhoneや、2008年に発表されたAndroid搭載端末などのスマートフォンの登場は、これまでのフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)を中心とするモバイル市場に大きな地殻変動をもたらした。機器や部品の小型化、ワイヤレス技術の発展といったハードウェア面の進化だけでなく、クラウドコンピューティングとの連携やソーシャルネットワーキングとの親和性の高さといったソフトウェア面の進化ともあいまって、スマートデバイスは爆発的に普及することとなった。既に各モバイルキャリアの主力製品の軸はフィーチャーフォンからスマートフォンやタブレットに移っている。
高解像度の大画面にてタッチパネルで直観的に操作するスマートデバイスのインタフェースは非常にシンプルで使いやすく、その利便性をコンシューマー市場だけでなくビジネス市場でも活用したいという動きにつながった。いわゆるITのコンシューマライゼーションである。企業にとっても社員の業務効率向上とコスト削減を両立できるソリューションとして、BYODに注目が集まっている。
BYODのメリットは、大きく3つある。1つ目は、いつでもどこでも必要なデータにアクセスし、時間や場所の制約を取り払うことができるという「利便性の向上」だ。2つ目は、個人の使い慣れた端末(会社で支給される端末よりも高性能である場合がほとんど)で情報を一元管理し、生産性の高い作業ができるという「業務効率の向上」。3つ目は、企業にとって端末支給や端末管理にかかわる「コストの削減」が実現できるという点である。
一方で、主に企業のIT部門の視点から、BYODには以下のような3つのデメリットも存在する。まず1つ目は、複雑な企業アプリケーションにおいても、ユーザーからはコンシューマー向けアプリケーションの高い操作性や使い勝手を求められることである。2つ目は、さまざまなOSやバージョンを個人端末で管理、サポートする手間ひまや、通信費の補助など新たなコストが発生するということだ。3つ目は、個人端末上に保存したデータの取り扱いや、企業システムへのアクセス認証・認可といったセキュリティ上の懸念が存在する。
しかし、モバイル活用の先進企業では、こうしたBYODのデメリットもさらなる技術革新や運用上の工夫によって克服し、BYODのメリットを享受している。デメリット克服のためのソリューションとして、例えば、端末上で企業データと個人データを仮想的に分割するパーティションニング、端末やモバイルアプリケーションへのアクセス制御、リモート管理を行うMDM(Mobile Device Management)、MAM(Mobile Application Management)といった技術がある。運用面では、サポート対象の個人端末に一定の制限を設け、管理の負担を減らすBYOSD(Bring Your Own Supported Device)やCYOD(Choose Your Owen Device from a designated list)といったものが挙げられる。
執筆者
藤山俊宏(ふじやま としひろ)
アクセンチュア株式会社 テクノロジー コンサルティング本部
テクノロジーアーキテクチャ グループ シニア・マネジャー
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