IT調査会社のIDC Japanは9月3日、国内テレワーク関連市場の分析結果を発表した。これによると、テレワークを利用する企業は増加傾向にあり、それに関するIT機器の売り上げも伸びているという。
テレワークとは、収入を伴う仕事をしている人のうち、仕事でIT機器を利用し、自分の所属する部署のある場所以外の、ITを利用できる場所で、週に8時間以上仕事をする人を指す(国土交通省の定義による)。これはIDCがグローバルで定義する「モバイルワーカー」の中で、「モバイルプロフェッショナル(オフィス型)」「モバイルプロフェッショナル(テレコミューター)」「モバイルプロフェッショナル(自宅型)」に当てはまるのだという。
そうした定義に基づき、テレワークの利用動向について、2013年7月に従業員10人以上の国内ユーザー企業796社を対象に調査を実施したところ、前回(2011年)と比べて外勤者向けのテレワーク利用は30.8ポイント、在宅勤務は20.4ポイント増加した。この背景として、同社 ソフトウェア&セキュリティグループマネジャーの眞鍋敬氏は「東日本大震災後、企業において事業継続性対策と業務の効率向上に対する要求が高まり、2012年以降に具体的な予算がついた」と解説する。
一方で、テレワークを実施しない企業では、コンプライアンスやデバイスセキュリティに課題を感じる、テレワークにするべき業務がないなどを理由に挙げている。
こうした状況の中、「テレワークを導入した企業は効果を上げることでさらに導入を加速する一方で、未導入の企業は二の足を踏んだままになっている。両者の意識の差はますます広がるだろう」と眞鍋氏は見る。特に中堅・中小企業では未導入の場合が多く、彼らに対してはテレワーク導入のためのコンサルティングサービスやパッケージング製品、クラウドサービスの提供などが今後必要になってくるとしている。
ハードウェアやソフトウェア、ネットワーク機器などの売り上げ額をベースに構成されるテレワーク関連ICT市場については、2012年から2017年にかけて年間平均成長率(CAGR)は6.6%成長と予測。2017年には1兆963億円の市場規模になるという。とりわけPC、タブレット端末、スマートフォンといったクライアントソリューションが成長をけん引するとした。
関連記事
- 実録 日本マイクロソフトが無人になった日:そして誰もいなくなった
東日本大震災後の1週間、社員が全員在宅勤務であったにも関わらず、日本マイクロソフトは数々の復興支援プロジェクトを立ち上げた。彼らの活躍を支えたのは、日ごろから実践しているモバイルワークであった。 - テレワークは日本企業を強くする!:「節電目的でテレワークのシステムだけを導入してもBCPの効果は薄い」――田澤由利氏
新特集「テレワークは日本企業を強くする!」では、在宅勤務のあり方について企業や有識者の意見を伝えていく。第1回は、日本におけるテレワークの第一人者で、国のテレワーク施策にも提言している田澤由利氏だ。 - テレワークは日本企業を強くする!:在宅勤務制度の導入、まずはトライアルで始めよう 日本HPの先行事例に学ぶ
約4年前から全社員を対象に在宅勤務制度を導入している日本HPは、このたびの震災を受けて適用日数を増加した。もちろん節電対策としても有効だが、それ以上に社員の生産性向上に着目した。 - サイボウズ流の働き方:一部の人だけのものではない 目指せ日本型テレワーク
時間や場所にとらわれない働き方「ウルトラワーク」を実践するサイボウズ。同社とは異なるアプローチでテレワークを実践する企業での取り組みを、サイボウズのフェローを務める野水克也氏が取材した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.