「自社製品の評判を監視しないのはリスク」――重要性を増すセンチメント分析:Computer Weekly
ソーシャルメディアで交わされるやりとりが、企業のブランドイメージを左右する時代になった。ソーシャルメディア上の「ユーザーの声」に無関心では済まされない。
ハサン・サイード氏のような存在は、あらゆる企業にとって最悪の頭痛の種だ(訳注)。提供された製品またはサービスに不満があれば、苦情を言う。その苦情への対応の仕方が気に食わなければ、さらに次の手を打つ覚悟ができている。ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は、2013年前半にその影響を思い知ることになった。
訳注:「Computer Weekly日本語版 11月20日号:セキュリティ担当者を悩ます2つの敵」のDOWNTIME通信でサイード氏の一件を詳しく紹介している。
BAがサイード氏の父親の荷物を紛失したが、同社のカスタマーサービス部門は十分な対応をしなかった。それにいら立ちを募らせたサイード氏は、他の数千のコンシューマーにならい、ソーシャルメディアを使って怒りをぶちまけた。
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BAが、マーケターにとってもカスタマーサービス部門にとっても救いの手となる最新のソフトウェアに投資をしてさえいれば、と悔やまれる。Facebook、Twitter、YouTube、LinkedIn、ブログ、その他のオンラインコミュニティーで数百万件の会話が交わされている中で、企業が物理的に、自社のサービスや製品についての評判を漏らさず把握することはほぼ不可能だ。
しかし、米Thomson Reuters、米IBM、米Xeroxなどの企業は巨額を投じ、コメントのセンチメント(感情)を正確に特定することで問題がエスカレートする前に企業が潜在的な問題を把握できる、ソーシャルメディアのセンチメント分析ソフトウェアの開発に取り組んでいる。
ニューヨークにあるXeroxのリサーチセンターでデータ分析研究所長のトン・ソン氏によると、このようなプラットフォームで極めて重要な性質は「自動化」だという。
「ツイートの文脈の評価や投稿元の特定に人間が介入する必要があると、ペースが遅くなり、全体的な価値や(処理できる)ソーシャルメディアデータが少なくなる。この研究所では現在、コンピュータが面倒な解析を全て処理するプラットフォームのパイロット運用を実施している」とソン氏は語る。
英Watch My Competitor.comのディレクターで共同設立者のアマンダ・シンクレア氏は、この点がソーシャルメディアセンチメント分析プラットフォームの最大のメリットだと説く。Watch My Competitor.comは、ユーザーが同社のSaaSプラットフォームを利用してソーシャルメディア、Webサイト、ニュースをモニターできる「セルフサービス型のビジネスインテリジェンスポータル」を提供している。
Watch My Competitor.comは複数の大手FMCG(fast moving consumer goods:日用消費財)企業が利用しているクラウドベースのサービスで、1日に2、3回、自動的にユーザーにメールを送り、ユーザー企業自身やその競合に関連のあるアクティビティを通知する。ソーシャルメディアでは短期間で手が付けられないほど情勢が悪化することを考えると、これは重要な機能だ。
シンクレア氏は、「日々、Twitterユーザーはブランドについて話したり、アドバイスを求めたり、褒めるまたは苦情を言っている。少なくとも企業は、Twitterで自社のブランド名への言及を監視し、自社が話題にされていないかどうかを把握すべきだ」とアドバイスしている。
黎明期にあるソーシャルメディアセンチメント分析
IBMのビジネス分析プロダクトおよびテクノロジーエキスパート部門のカーク・ラブゼイ氏は、「しかし、こういった会話を監視するだけでは済まない。話されている内容に対してアクションを起こす必要もある」とくぎを刺す。ラブゼイ氏は例として、繁華街に店を構えるアパレルショップを挙げた。このショップでは、販売している商品がソーシャルメディア上で痛烈に批判されたことがあったが、ソーシャルメディアセンチメント分析ツールを使っていたおかげで、見過ごすところだった問題を把握し、問題を是正できたという。
「ソーシャルメディアセンチメント分析ソフトウェアというのは、自分が気付いていないことを教えてくれる」とラブゼイ氏は説明する。「ソーシャルメディアサイトでは匿名性が確保されているように感じられる。そのため歯に衣着せぬ意見を聞くことができる」
ラブゼイ氏は、この種類のソフトウェアは産声を上げたばかりである上、市場には製品が乱立しているため、どのシステムを選べばよいか、多くの迷いがあると指摘する。ほとんどの製品はSaaSベースであること、またIT部門ではなくマーケティング部門やマネジメントが導入を決定することも、混迷を深める要因になるかもしれない。
「このような大きな分野に取り組む場合は、さまざまな雑音があるので、それらを賢明に取り除いていかなければならない」とラブゼイ氏は語る。「これは複雑な科学だ。例えば、正直な意見か皮肉かを見分けるのは難しい。有効なセンチメント分析を行うには、大量のデータを登録した辞書を作成し、そこに構文式を適用する必要がある。IBMではそのような機能を提供している」(ラブゼイ氏)
センチメント分析を活用する投資銀行
早々にソーシャルメディアセンチメント分析を導入しているのは、スーパーマーケットチェーンなどの小売企業、ハイテク企業、金融業などだ。その他にこのツールの普及が進んでいる領域は、あなたの知らない、大型金融取引の世界だ。
株取引用ソーシャルメディアセンチメント分析ソフトウェアを提供するHedge Chatterの創設者ジェームズ・ロス氏は現在、幾つかの「世界的に知られている」金融機関(いずれも情報非公開)と取引をしている。
ロス氏によると、「ソーシャルメディアセンチメント分析をトレード戦略に取り入れる方法を模索している投資銀行は多数ある」という。「ただし、その具体的な数を把握することは難しい。ソーシャルメディアと投資を結び付けることは、まだ、受け入れられていない慣行であり、関係者には箝口令が敷かれている状態だ。また、こういった投資銀行が実際に何らかのモデルを確立できた場合、それはその銀行の虎の巻となるので、競合に知らせたがらない」と同氏は説明する。
Watch My Competitor.comのシンクレア氏は、現在の経済情勢では、どれほどわずかでもライバルより何かしら優位に立つことが明暗を分ける要因になり得る。従って、ソーシャルメディア上で自社の製品やサービスについてどのようなことが語られているかを監視しないでいるリスクを甘く見てはならないと、警鐘を鳴らす。
シンクレア氏は、「自社の製品や業界についての一般の声をモニターすることは、将来の製品設計や価値提案の策定時に役立つ。その意味で、Twitterはすばらしい市場調査ツールにも、リード生成ツールにもなる」とし、さらに次のようにコメントしている。
「同様に、ブランドについての一般の声をモニターすれば、カスタマーサービスや広報に役立てられる。ソーシャルメディア攻撃にいつの間にかさらされていたという企業の例は多数ある。このようなツールに投資しなければ、簡単に会社の評判やブランドに大きな傷を付ける結果になることが考えられる」
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