【最終回】社員一人一人が企業文化の語り手となるためには:VOYAGE流・企業文化構築プロジェクトの全貌(2/2 ページ)
今回は採用プロジェクトの具体例を用いてプロジェクトリーダーとして押さえておきたいポイントを紹介します。
手段を目的化しない
VOYAGE GROUPでは、新卒採用で宝探しを行ったり、Island(体感型ビジネスプログラム)という無人島で宝探ししたりというインターンシップがあります。新卒採用での宝探しは既に3年目になり、学生にも広く知られるようになってきました。
なぜ宝探しなのでしょうか。VOYAGE GROUPは海賊をモチーフにして社名やオフィスと同様に統一したブランディングをしていること、インターンでの他社との差別化を図りたかったことなどがありますが、何よりインターンを通して学生だけではなく、作り手である社員たちもワクワクできるものにしたかったというのが大きな理由です。
こうしたユニークな内容は、人事メンバーたちがアイデアを出し、自ら作り上げています。旧来から存在するインターンは既にコモディティ化し始めており、オリジナルな仕掛けを必要としていた中で有効なアプローチであったわけですが、ゲームバランスの設計やコスト、無人島や移動手段の手配、天候など、課題は山積していました。それらを人事メンバーたちで1つ1つ解決していったのです。
単年で終わることなく今も継続できている理由は、学生に「VOYAGE GROUPの新卒採用やインターンは面白い、成長できた」と感じてもらいたいという、人事メンバーの圧倒的な熱量に尽き、「手段を目的化しなかったこと」が成功要因だと思っています。
とかく、アプローチがユニークであるものは手段が目的になりがちです。世界観や面白さを追及していくことも大事なのですが、それらを通して何を実現したいのか、するべきなのかの議論が課題を解決していく各フェーズでしっかりと話されていることが重要です。今回の例で言えば、作り手側である自分たちの自己満足とせずに宝探しや無人島を通して、何を基準にして学生を見ていくべきなのかを明確にし、その目線をメンバーで合わせられたことにあります。
3回にわたり、企業文化変革プロジェクトをプロジェクトリーダーの目線から、特に経営理念、オフィスリニューアル、採用という3つの事例を通してお話ししてきました。しかしながら、こうした取り組みはまだ続くものであり、企業文化を創出、定着、発信していくことに終わりはないと考えています。
市場環境が変わっても会社の思いやメッセージにおける普遍的なもの、コアとなるものは変わりませんが、経営理念、オフィス、採用、制度、福利厚生などは常に時代性に合わせていく必要があるとも思っています。同じブドウでも土壌が違えば味の違うワインが出来るように、企業文化も人や風土が違えば、同じ施策でも全く異なるものになりえます。その1つの施策として、本連載で紹介したプロジェクトが読者の皆さんの参考になれば幸いです。
著者プロフィール
青柳智士
株式会社VOYAGE GROUP
取締役CCO スマートフォン事業兼人事統括
1979年、神奈川県出身。2002年武蔵野美術大学卒業後、インテリアメーカー、株式会社サイバーエージェントを経て、2008年株式会社ECナビ(現VOYAGE GROUP)へ入社。ショッピング事業本部長を務め、2009年より同社取締役CCO(Chief Culture Officer)に就任。現在は、社内外でのブランディング構築・強化をミッションとして、人事やコーポレートデザインを担当する一方、スマートフォン関連事業や無料シェアオフィス「BOAT」の担当役員も務める。
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