学生1万9000人が使う“PCルーム”を全廃する九州大 その狙いとは?(3/3 ページ)
九州大学は2017年度までに全学生に個人所有PCの持ち込みを義務付け、学内のPCルームを全廃する計画だ。その背景と狙いを聞いた。
教材は「極力オンライン化を進めていく」
同大では2012年に「教材開発センター」を設置し、各学科で使う教材のオンライン化を進めている。現時点ではオンライン教材の利用状況は授業によってさまざまだが、「今後PCを使って授業をする教員は基本的にオンライン教材を使うことになるだろう」と藤村教授は見込む。
実際、藤村教授が担当している「情報処理演習」では2013年度から個人PCとオンライン教材による授業を行っており、これまでの1年で「問題が起きたことは1度もない」という。今後は教材開発センターを通じ、他の科目の教材も「極力オンライン化を進めていく」方針だ。
オンライン教材は当然PCがないと使えないが、同大ではPCを持たない学生への貸し出しなどは行わない方針。「学校に教科書を持ってこない学生が自ら損をするのと同じ。貸し出し用のPCも準備しているが、持ってきたPCが故障してしまった学生にしか貸さない。大学としてやれることはやるが、PCを買わない、持ってこない学生に対して過保護にする必要はないと考えている」
PC関連コストを抑制し、サービスを強化していく
同大は一連の取り組みを通じ、学内PCの調達・保守にかかっていたコストの削減を見込む。また、学生向けにウイルス対策ソフトとWindows、Microsoft Officeを一括契約したことで、これらを個別に購入するのと比べて「これまでで実質40億円ほど支出を抑えられている」と藤村教授は話す。
PCを減らすことで浮いた予算をもとに、今後は学生向けサービスを充実させていく方針だ。「PCのように学生個人で賄える部分に投資しない代わりに、例えばWeb学習システムや学習管理システムといったサーバ側のシステムに投資していく。そうした方向でサービスを強化していきたい」(藤村教授)
「国立大学としてちゃんと教育環境をよくして生き残ろうと思ったらこれくらいのことはやらないといけない。他に選択肢はないと思う」――九州大は今後も1人1台の個人PCを通じ、高度なICT教育を推進していく考えだ。
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