日産自動車が始めた「ビッグデータビジネス」の狙い(3/3 ページ)
日産は2013年、電気自動車「リーフ」の走行情報を外部企業向けに販売する事業をスタートした。同社にとって初となるビッグデータビジネスの狙いとは――。
オーナーに「新しい選択肢を提供できた」 運転行動に応じた保険も提供へ
こうして走行距離連動型自動車保険として誕生したドラログは、リーフ1台ごとの走行距離に応じて翌年の保険料がプラスマイナス最大約10%の幅で上下する。つまり、走行距離が少ないオーナーほど保険料が安く済むようになっている。
利用者の評判は上々のようだ。「実際に保険料が安くなるケースも出てきており、それは素直によかったと思う。長距離を走る人は通常の自動車保険より高くなるケースもあるが、そういう人はこの保険を選ばなければいい。リーフのオーナーに新しい選択肢を提供できたのは大きな成果だ」と山下さんは自信をみせる。
データ活用で実現したのはこれだけではないという。ドラログの契約者は、損保ジャパンのWebサイト上で、自分の走行データのフィードバックや、急発進/急ブレーキといった運転行動に基づく「エコ・安全運転診断結果」も閲覧できるようになっている。
同社は近い将来、こうした運転行動の分析結果を活用した保険商品も開発・提供していく方針だ。「現時点で提供しているドラログの保険料は走行距離だけに応じたものだが、今後はオーナー1人1人の運転行動に応じた保険料を提示したい。そうすれば、オーナーも自然と安全運転を心がけるようになるだろう」(山下さん)
自動車オーナーが安全運転を心がけるようになれば、保険会社が事故に対して保険金を支払うケースも減るし、保険料が下がればクルマの購買促進につながる可能性もある。「当社はこれまでもデータ活用に向けた検討を行ってきたが、損害保険分野ほど誰もがメリットを共有できるデータ活用例は珍しい」と山下さんは話す。
ビッグデータは他企業との連携が欠かせない
同社は今後、自動車保険以外の分野でもデータを活用し、顧客向けにさまざまな付加価値サービスを生み出していく方針だ。すでにNTTドコモと共同で家庭内エネルギー監理システム(HEMS)にリーフのプローブ情報を活用する取り組みを進めているほか、ガソリン車向けにもドラログのような走行距離/運転行動連動型自動車保険を提供する可能性もあるという。
「ビッグデータというのはあるデータと他のデータとの組み合わせ。1つの企業だけで収まるデータではなく、他の企業のデータと組み合わせることで新たな価値を生むのが本当のビッグデータだと思う」と山下さん。日産は今後もデータを社内外で活用し、顧客への付加価値提供につながる取り組みを進めていく考えだ。
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